『貧血』

貧血とは?
血液を構成する成分の1つ、赤血球や血色素(ヘモグロビン)の量が減少した状態が『貧血』です。   血液は全身に酸素を運び、炭酸ガスを回収する役目をしています。全身の組織や臓器はこの酸素と栄養素をエネルギーとして利用しています。血液が肺を通過する間に酸素を取りこんで赤血球中のヘモグロビンと結合する事により酸素の豊富な血液となるのです。
 

症状
 全身への酸素の運搬が上手くいかなくなり、酸欠となります。酸欠の起こる場所によって立ち眩み、めまい(脳)、疲れやすくなる(筋肉)、狭心症(心臓)などが現れます。その他、息切れ、動悸、顔色不良、爪の異常(割れやすい・扁平になる・反り返る)という症状も起こる事があります。
 

貧血の種類
@鉄欠乏性貧血    体内の鉄が不足して起こる貧血です。
最も頻度が高い。詳細は後ほど。
A巨赤芽球性貧血  ビタミンB12や葉酸の吸収が上手く出来ず欠乏して起こる貧血です。
B溶血性貧血   赤血球が壊れやすくなって起こる貧血です。
C再生不良性貧血  骨髄での血液成分がうまく作れなくなって起こる貧血です。

☆ 今回は特に@鉄欠乏性貧血について紹介します。

鉄欠乏性貧血??
成人男性では、便、尿、汗などから1日約1mgの鉄が失われます。その為、経口的に鉄分を補給しています。   通常、人間1日当りの食物中の鉄量は12〜15mgですが、その5〜10%(約1mg)が吸収されて均衡を保っているのです。

鉄の摂取不足、腸での吸収不良、出血などが起こると、体内の鉄分が不足してヘモグロビン量の少ない不完全な赤血球が作られて貧血を生じるのです。女性では月経、妊娠、授乳などでより多くの鉄が失われるため、鉄欠乏性貧血を起こしやすいのです。また、出血は消化性潰瘍、消化管癌、痔などが原因となり特に、慢性的な出血は鉄欠乏性貧血にとって重要な原因となります。
貧血は徐々に進行していくので、体内の鉄の貯蔵量がかなり減った状態でもその症状に気付かずに過ごしてしまう事も多々あるでしょう。疲れやすい、だるいという事が続くという方は、貧血を疑って検査してみることも必要です。
 

貧血の検査
貧血の検査には、血液中の赤血球の数やヘモグロビンの量を調べ るものが一般的です。赤血球とヘモグロビンの基準値はそれぞれ成 人男性 460±60万、15±2mg/dl、成人女性 430±60万、14± 2mg/dlで、これを下回ると一般的に貧血を疑い、精査が必要です。 ただし、これらの基準値は年齢によって異なるため、注意してください。 またこの赤血球数とヘモグロビン濃度から、赤血球恒数が計算でき、 その値から貧血の種類をある程度推測することが出来ます。


  赤血球恒数

MCV(平均赤血球容積)=ヘマトクリット÷赤血球数×10

MCH(平均ヘモグロビン量)=ヘモグロビン濃度÷赤血球数×10

MCHC(平均ヘモグロビン濃度=ヘモグロビン濃度÷ヘマトクリット×100


種類の推測
小球性低色素性貧血
MCV≦83
MCH≦27
MCHC≦30
正球性正色素性貧血
MCV=84〜98
MCH=28〜35
83MCHC=31〜36
大球性正色素性貧血
MCV≧99
MCH≧36
MCHC=31〜36
鉄欠乏性貧血
鉄芽球性貧血
サラセミア
急性出血
溶血性貧血
ビタミンB12欠乏
葉酸欠乏
巨赤芽球性貧血
(悪性貧血)
肝障害に伴う貧血

例えば
赤血球:5.00(×10 /μl)、ヘモグロビン濃度:16(mg/dl)、
ヘマトクリット:45(%)のとき、
MCV=45/5.00×10=90(fl)
MCH=16/5.00×10=32(pg)
MCHC=16/45×100=35.6(%)
となります。



貧血の予防と治療
貧血の治療は、まず原因を取り除く事です。鉄欠乏性貧血には鉄の補給、巨赤芽球性貧血にはビタミンB12の補給です。鉄分を多く含む食品だけでなく、ヘモグロビンを作るたんぱく質や造血を促進する食品、そして鉄の吸収を促進する食品をとることが大切です。ただし、貧血の症状が重くなると、これだけでは鉄分を補う事ができません。同時に鉄剤で鉄分を補給することが必要となります。
 


食生活の改善
食品に含まれる鉄分には、"ヘム鉄" と "非へム鉄" があります。ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて数倍も 腸での吸収が多いので、ヘム鉄を十分に摂るように心がけましょう。

=ヘム鉄の多い食品=
うなぎ、煮干し、いわし、レバー(特に豚肉)、あゆ、かつお など

=非ヘム鉄の多い食品=
ひじき、切干大根、ほうれん草、大豆、あさり、しじみ など

* 非ヘム鉄でも動物性タンパク質と一緒にとると吸収が良くなります。献立次第で十分に貧血の 解消に役立ちます。

 

☆ 1ポイント豆知識 ☆

鉄分はコーヒーやお茶に含まれるタンニンやおいもなどに多く含まれる食物繊維 によって吸収が阻害されやすくなります。 鉄分補給を心がけた食事をとる時に、お茶やコーヒーのがぶ飲みは避けましょう。

偏りの無いバランス良い食事をとって、適度の運動を心がけ、貧血を予防しましょう。 貧血を早めに見つけるためにも、最低年1回の健康診断をおすすめします。