『痛風』
増えている高尿酸血症
 痛風とは”風が吹いても痛い!”と言われるほどの激痛を伴う病気です。
 痛風の発作は急性発作により始まり、その症状の多くは、夜間あるいは早朝突然に足の親指に疼痛を感じ、数時間内に激烈となります。一般的には、中年男性に多くみられますが、最近では若い年齢の人たちにもみられるようになりました。
 食生活の欧米化によって「グルメ嗜好」が広がり、脂肪の摂取量が増え、それに伴って「肥満」が増加してきています。このような時代の食生活の変化によって、肥満(特に内臓脂肪型肥満)が増え、それに伴って痛風が増えてきていると考えられます。それ以外の誘因としては、飲酒・脱水・ストレス・激しい運動・プリン体の多い食品の摂りすぎがあげられます。
 また、家系内に高率に痛風患者が発生し成人男性に圧倒的に多いことから、遺伝素因が大きく関与していると言われています。
 痛風の基礎となる「高尿酸血症」は、放置すると心臓病や腎臓病などの合併症をおこす恐い病気ですので、検査で尿酸値に異常(7mg/dl以上)がみられましたら、一度主治医に相談するのが良いでしょう。

痛風ってどんな病気?
 痛風の起こる前期には、「高尿酸血症」と言って、血液中の「尿酸値」が高くなっています。
 この時期は症状がありませんが、放置すると血液中の尿酸が関節に沈着し、この結晶が神経を刺激して「痛みの中でも最強の痛み」と言われる痛風の典型的な痛みが起こります。
 急性期が繰り返して起こっても、痛みに対処するだけでは、体に溜まった尿酸が関節の中で常に炎症を起こし続ける状態で絶えず痛みに悩まされることになり、さらに放置しておくと、尿酸が体のあちこちに沈着し、塊を作るようになってしまいます。これを「痛風結節」と呼び、慢性結節性痛風期を迎えてしまうようになると、命にかかわるような合併症を起こす可能性も高まります。
 痛風の合併症には、高脂血症、痛風腎、高血圧症、糖尿病、虚血性心疾患などがあります。
 このような状態を予防するためには、運動などの生活改善と共に食生活の改善が必要となります。
痛風の原因となる「尿酸」とは?
 体にはたくさんの細胞がありますが、細胞は毎日作られたり壊されたりという新陳代謝を繰り返して成り立っています。
 細胞の中には、細胞の核を構成する「核酸」という物質があり、それを構成するのが「プリン体」と呼ばれる物質です。プリン体は核酸の原料ですが、そればかりではなくエネルギーを発生させるATP(アデノシン三リン酸)の原料にもなる物質です。
 核酸は分解されてプリン体ができますが、これは「ヒポキサンチン」という物質を経て「尿酸」になります。
 このように分解された尿酸は、最終的に体外に排泄されるという仕組みになっており、つまり尿酸とは、細胞の最終産物と言うわけです。
 プリン体の分解からできる尿酸の尿中への排泄量は、平均一日750mg(成人男性)くらいで最終的に腎臓から尿へと、腸から便へと排泄されていきますが、体内には1200mgもの尿酸が実は「尿酸プール」という形で常時蓄積されています。
 この「尿酸プール」によって、体内に尿酸が何故必要になるかは詳しく解っていませんが、尿酸が癌や老化の原因となる「活性酸素」を消す働きがあるからではないかと言われています。
 このように重要な働きをする尿酸ですが、一定以上に血液中に増えると尿酸値が上がり、その結果「高尿酸血症」をおこしてしまいます。
 尿酸は、血液1デシリットル中の尿酸値が7mg以上になると体内で結晶化して悪さをしますので、これ以上の数値になると「高尿酸血症」となり、注意が必要です。
 痛風の激痛は、この針のように尖った結晶化した尿酸が血液中に増え、神経などを刺激することが原因で起こります。
 「尿酸」が増加する原因は、尿酸の素である「プリン体」が増えたり、尿酸の排泄が減ったりすることによります。
 軽いジョギングプリン体の増加は食物からの摂りすぎがあり、プリン体を多く含む食べ物を摂りすぎないようにすることですが、現在では薬の開発もされ、以前ほど食事の「プリン体」制限が厳しく考えられなくなってきています。
しかし、薬だけに頼って痛みだけを抑えても、根本的に尿酸値を下げなければ恐ろしい合併症を引き起こすことに成りかねないので、食事の改善は「高尿酸血症」のためにはなくてはならないものなのです。
 また激しい運動によっても尿酸が増えますが、これは激しい運動を20分以上続けるとエネルギーのもとであるATP(アデノシン三リン酸)の分解によってヒポキサンチンができ、これが尿酸の原料となるためです。
 高尿酸血症では、肥満を防ぐために運動が必要ですが、運動は軽いものにして、激しいスポーツのし過ぎはこの場合避けるようにしたいものです。
高尿酸血症の食生活
 高尿酸血症の人がまず第一に気をつけることは、「摂取エネルギーの制限」です。高尿酸血症の人は肥満者が多く、肥満を招いたエネルギーの過剰がなんらかの形で尿酸の代謝に関わっているものと考えられています。
大食いのイラスト  エネルギーを制限した食事は、プリン体を制限した食事よりも血液中の尿酸値が下がったという結果が多くみられ、高尿酸血症の食事療法にはエネルギー制限が重要であると言えます。
 また、高尿酸血症の人は肉や魚に片寄った食事をしている人が多いのも特徴で、このような場合、芋類・野菜・海藻・キノコ類などを適度に取り入れたバランスの良い食事を心掛けることが必要です。バランスの良い食事は、合併症となる動脈硬化や腎臓病の予防のためにも必要です。
 高尿酸血症では、腎臓結石から腎臓を壊す危険があるので、それを避けるために尿をアルカリ性にして溶かす必要があり、そのためには野菜や果物を十分摂る必要があります。特に「尿酸排泄促進薬」を飲んでいるいる人は、大量の尿酸が排泄されることによって腎臓結石を起こしやすいので尿を酸性に傾けないようにしなければなりません。 
 プリン体は遺伝子の一部なので、多かれ少なかれ総ての食品に含まれいることになり、まったくプリン体を摂らないというわけにはいきません。
 最近では、良い薬の開発により「食事によるプリン体の制限は必要ない」という考えもありますが、日常プリン体を多く含む食品ばかりに片寄った食事をすることは好ましくありません。
 食品中の「プリン体」を減らすことや、料理法によってプリン体を体に取り込まないような工夫が必要です。
料理の工夫でプリン体摂取を減らす
  • 食品に含まれる「プリン体」は水溶性で、料理するときに水中に溶け出す性質があるので、肉や魚は茹で汁を捨てることにより、かなりプリン体を減らすことができます。
  • 肉を焼いたあとの「肉汁」は、料理に使用しないようにしたほうが良いでしょう。
  • 「だし」に使用される旨味成分の「イノシン酸」もプリン体の一部なので、調味料を使う時には注意が必要です。
プリン体の多い食品
 肉・魚・貝類・ウニ・イカ・タコ・たらこ・蟹・蒲鉾などの練り製品など。
 特に、レバー・サンマ・イワシ・マアジ・アンコウ肝・エビ・大豆・カキは「プリン体」が多く含まれるので、尿酸値が高い人は控える方がよいでしょう。また、ラーメンの「だし」には、豚骨や鶏がらが使われていますので、汁は飲まないようにしましょう。
アルコールの制限
 アルコールの飲み過ぎは高カロリーとなり、エネルギー過剰に繋がることはもちろんですが、アルコールは血中の尿酸値を上昇させるので注意が必要です。
 特にビールはお酒の中でも「プリン体」含有量が多く、エネルギーとプリン体の両方を高めることになります。ビール以外のアルコール飲料も控えるようにすることが基本です。
水分を十分に摂る
 血液中の尿酸値を高くしないように尿酸をうまく排泄させるためには、日頃から十分に水分を摂ることが必要です。
 しかし、水分といってもジュースやアルコール飲料では高カロリーとなるので、水やお茶などカロリーを気にしなくて良い飲み物を摂るようにしたいものです。