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昨年暮れに天皇陛下に見つかったことでもよく知られている『前立腺がん』は、中高年男性に見られる病気です。 もともと欧米で多い疾患でしたが近年日本でも急増しています。 進行が遅く、症状もなかなか出にくい為、早期発見が難しい病気ではありますが最近では最低年1回健康診断に加え られるなどして見つけることが可能となってきています。 また前立腺のよく知られている病気として『前立腺肥大症』というものもあります。 今回はこの前立腺がんと前立腺肥大についてお話します。 |
*前立腺ってどんなもの? |
前立腺とは、男性のみにある臓器で膀胱の真下にあり、尿道を 取り囲んでいるクルミくらいの大きさをしたものです。 精液の一部となる前立腺液を作っており、青年男性では盛んに 活動していますが、高齢になると役割を終えて次第に退化します。 ところが、一部で異常を来たす場合がありこの状態が〜前 立腺肥大症〜や〜前立腺がん〜となります。 |
*前立腺肥大症と前立腺がんのちがいは? |
前立腺肥大症が進行したものが前立腺がんではありません。
これら二つの疾患はまったく違うものです。
前立腺肥大症はみかんに例えると 実の部分、つまり移行域(内腺)という ところが大きくなって尿道を圧迫し、 尿の出が悪くなった状態です。 |
前立腺がんはみかんの皮の部分、 つまり周辺域(外腺)というところが 夏みかんのように分厚く凸凹になった 状態です。 |
*こんな症状はありませんか? |
@ トイレが近くなった(特に夜間)。 A 夜中に何度もトイレに起きることがある。 B 力まないと尿がでにくい(すぐに出ない)。 C 尿の勢いが弱くなった。 D 尿が出終わるまでに時間がかかる。 E 残尿感がある。 F 尿意を我慢できずに漏らす事がある。 G 排尿時に圧迫感がある(痛みを伴う)。 H 尿や精液に血液が混じる。 |
最初にも述べたように、前立腺の病気は自覚症状がでにくいものです。 このような症状がみられる人は要注意です。 長い間放って置くと症状が進んで、前立腺肥大のほかに 細菌感染症や腎不全などの病気を引き起こすことがありあります。 早めにかかりつけ医へ受診して下さい。 |
*検査してみましょう! |
前立腺がんを早期に発見する為の検査には大きく3種類あります。 |
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T.腫瘍マーカー ・・・血液中のPSA濃度を検査します。 U.直 腸 診・・・肛門内から直接触診することによって検査します。 V.超音波検査・・・直腸内からの前立腺の超音波画像から検査します。 |
前立腺がんを早期に発見する為、健康診断などでも広く行われているのがPSA(Prostate Specific Antigen=前立腺 特異抗原)検査と呼ばれる血液検査です。 0〜4ng/mlが一般に正常域と言われていますが、4〜10ng/mlは前立腺肥大などその他の 前立腺疾患と前立腺がん とが混在するグレーゾーン、10ng/ml以上で前立腺がんが強く疑われます。 |
ただし前立腺がんであってもPSAの値が 上がらない場合もあり、必ずしも全てのがん がこのPSA検査のみで分かるわけではな い為、超音波検査や直腸診と合わせて受診 されることをお勧めします。 |
*予防するためには・・・ |
前立腺がんの危険因子は今のところはまだはっきりと分かっていません。しかし、もともと 欧米に多かった疾患が 『食生活の欧米化』や『日本人の高齢化』とともに増えてきたことを考えると、これらは無視できない原因の一つでは ないかと思われます。 また前立腺肥大症の最大の危険因子は加齢です。しかし、これを防ぐことはできない為、生活習慣の中で気を付 けた方がよいとされるものを紹介します。 |
@ おしっこを我慢しない。 A 体を冷やさない。 B 便秘に気を付ける。 C 適度な運動をする。 D 過度の飲酒をさける。 |
予防策が分かっていないからこそ、前立腺の疾患は(特に前立腺がん)早期発見が最重要です。 50歳を過ぎたら、自覚症状がなくても定期的に前立腺がんの検査をすることをお勧めします。 採血で簡単に検査することのできるPSA検査はお近くの診療所で気軽に受けることができます。 企業や自治体によっては健康診断の項目に入っていることもありますし、人間ドック などで実施されている 場合もあります。いずれにしても、無症状で見つかる前立腺がんが増えてきています。 前立腺疾患や検査に関する詳しい事は当医師会センター、またはお近くの診療所までお気軽にご相談下さい。 |