肝 臓




肝 臓

≪@肝炎ウィルスの巻き≫





 肝臓は体の中で一番大きい臓器で、体外から摂取した栄養分を体が使いやすいように処理する「代謝機能」、体に不

要なものを体外に排出しやすい形に変える「解毒作用」、そしていざという時の為に栄養素を分解して肝臓に蓄える「貯

蔵機能」など、生命活動を維持する上でも極めて重要な働きをしています。

 また肝臓は臓器の中で唯一再生機能を持っており、手術で5分の1切り取っても元に戻る能力を持っています。さらに

肝臓には生きていく為に必要な機能の3倍から4倍の機能があると言われています。この能力を「肝臓の予備能」と言い

ますが、この予備能があるために、痛みや症状は殆ど出ず、相当悪くなるまで何とか持ちこたえてしまうのです。

 肝臓が≪沈黙の臓器≫と呼ばれる所以はここにあります。

 始めは一見油断しがちな誰にでも起こる体調の崩れ、しかし、自覚症状の少ない肝臓の異常を見逃してしまうと、心筋

梗塞、食道静脈瘤破裂など、肝臓以外の様々な箇所でも生死を左右する病気の引き金となる危険性があります。

 肝疾患は大変多岐にわたりますが、生活習慣病が引き金となり重篤な病態に進行する場合のある身近な疾患ですの

で、@肝炎ウィルス A脂肪肝・アルコール性肝障害 B肝硬変・肝癌 というように3回のシリーズに分けて解説したいと

思います。






★肝炎とは…?



 肝炎は年間20〜30万人以上の人がかかり、全国に200万人以上の患者さんがいると推定されます。病態により、急性肝炎

と慢性肝炎に分けられ、またその成因によりウィルス性(A型、B型、C型、E型、その他)、アルコール性薬物性自己免

疫性などがあり、肝炎と一口にいっても様々な種類があります。





     急性肝炎・・・肝細胞に急性の炎症が起こる肝炎 → 大部分がウィルス性

     慢性肝炎・・・肝細胞に6ヶ月以上継続する慢性の炎症が起こる肝炎。急性肝炎から移行する場合あり






★ウィルス性肝炎のメカニズム



 肝炎は肝炎ウィルスが体内に入り込むことにより起こりますが、ただ入り込むだけでなく肝細胞に住み着いてしまうのです。

肝炎ウィルスは肝細胞を直接破壊することはない為、ウィルスを持っているからといってすぐ肝炎になるわけではありません。

 肝炎ウィルスに対して免疫機能(体が異物であると判断して排除してしまおうとする働き)が働いて抗体を作り、ウィルスの住

み着いた肝細胞を一緒に破壊してしまうことにより、肝臓に炎症が起こり、これが肝炎の発症となります。

 ただし、体が異物であると判断した時に免疫機能が働くと共にリンパ球もこれを排除しようと働いている為、肝炎ウィルスが

肝細胞に住み着いてもリンパ球が活動し、免疫機能が働かなければ肝細胞は破壊されず、肝炎は発症しません。

 また、肝炎ウィルスが免疫機能により、完全に排除されれば肝炎は治まります。







★肝炎の種類



A型肝炎


B型肝炎


C型肝炎
放置すると高頻度に肝硬変→肝癌へと進行することから注目されています。  





 …C型肝炎の治療について…


  C型肝炎と診断された場合、インターフェロンと呼ばれる抗ウィルス剤の注射や肝臓を守る薬などで治療が行われます。

  インターフェロンは特効薬的な薬ですが、全例に有効なわけではなく、ウィルスの遺伝子型や量によって効果に差があり、

完治する人は約30%くらいです。

  最近では感染したウィルスの遺伝子型を調べることによってインターフェロン療法が有効かどうか治療前に推測することも

可能になりました。




〔インターフェロン療法〕

  インターフェロン療法の有効性を決めるものとして以下の4項目が重要視されています。

   ・ウィルスの量 : ウィルスの量が少ない程有効です。血液1cc中50万以下の場合が理想

            です。

   ・ウィルスのタイプ : 2b>2a>1b の順に有効です。

   ・年齢 : 高年齢者は有効性が低いです。

   ・白血球数と血小板数 : 白血球数と血小板数が少ないと副作用でさらに減少するので一定

               以上が必要です。

インターフェロン療法は重篤な副作用があります。具体的な副作用としては発熱、関節痛、筋肉痛、

白血球数や血小板数の減少、うつ病、眼底異常、食欲低下、体重減少、間質性肺炎、脱毛、甲状腺

機能異常、発疹、心臓の病気、心筋障害、糖尿病の悪化、タンパク尿などがあります。

 主治医に適応の有無、副作用などを充分に聞いて治療を行ってください。




☆★☆肝臓をいたわる生活のポイント☆★☆

  ◎良質のたんぱく質をしっかり摂る

  ◎ビタミン・ミネラルをたっぷり摂る

  ◎適正カロリーを心がける

  ◎食事は3食規則正しく、朝食を抜かない、夕食は遅くならないようにする

  ◎添加物・加工食品・インスタント食品をなるべく避ける

  ◎原則禁酒とする



★早期発見する為に…



 肝炎ウィルスに関する正しい知識を普及させ、自身の肝炎ウィルス感染の有無を知ることは非常に大事なことです。

 先にも述べたとおり、症状に気がつかないことが少なくない為、健康診断や他の病気にかかった時、献血の時などの

血液検査で感染を知る人が多いというのが現状です。

 現在わが国では住民が自身の感染の状況を認識し、必要に応じて保健指導や医療機関を受診することにより肝炎による

健康障害を回避したり、症状の軽減や進行を遅延させたりすることを目的として、基本健康診査と合わせ、肝炎ウィルス検診

を行っています。






  ここに一例として松阪市における肝炎ウィルス検診を紹介します。

〔対象者〕

  1)松阪市の実施する基本健康診査対象者のうち、平成18年4月1日時点で40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、

   70歳の方。

    *ただし、旧松阪市の方は、平成16年6月2日〜平成17年4月1日に、旧嬉野町、飯高町の方は平成17年4月1日に

     上記の年齢に到達された方も対象となります。

  2)大きな外科的処置を受けたことのある方や、妊娠・分娩の時に大量に出血した事のある方であって、定期的に肝機能

   検査を受けていない方。

  3)過去に肝炎ウィルス検診の対象年齢であったが、やむを得ない事情で検診を受けることの出来なかった方。

    *過去に松阪市の肝炎ウィルス検診を受けたことのある方については、実施対象としません。






ご注意を・・・


・平成14年〜18年までの5年計画での実施予定です。

・対象者1)の人には基本健康診査受診券に合わせ、肝炎ウィルス健診問診票が送付されます。

・対象者2)、3)の人は自己申告制です。

・基本健康診査と合わせて実施し、肝炎ウィルス検診のみの検診は実施できません。




松阪市以外の方は、対象者の区分や受診の仕方が異なりますので、お気軽に医師会センターまでお問い合わせ下さい。