肝臓




肝 臓

≪A脂肪肝とアルコール性肝障害≫





 人間ドックの全国集計でも肥満・高コレステロール血症を抜き、第1位となっているのが肝機能異常です。

その原因の中でもアルコールはよく知られていますが、現代脂肪肝による肝機能障害を起こす人が急増して

います。始めは一見油断しがちな誰にでも起こる体調の崩れですが、『沈黙の臓器』と言われる肝臓の静か

な異変に早い段階で気づく事が大切です。





☆どうして脂肪肝になるの・・・?


 健康な肝臓にも約3%を少し超えるくらいの脂肪(中性脂肪やコレステロールなど)は含まれますが、肥

満やアルコールの飲みすぎなどにより 10%を超えてくると顕微鏡下では肝細胞に脂肪滴という泡状のも

のが異常に増え、脂肪肝と呼ばれる状態となります。

 肝臓では前回でも述べたとおり<代謝>という働きをしますが、暴飲暴食などが続くと、肝臓が働きすぎ

の状態となり栄養分をうまく処理できなくなった結果、必要以上の脂肪が肝臓にたまり、脂肪肝になってし

まうのです。





知って得するワンポイント! 〜脂肪肝の意外な原因〜
@果糖 : 甘いものに含まれる糖分の半分が肝臓で脂肪に変わります。特に果糖分は脂肪に変わり

     やすいと言われています。

A栄養補給剤 : ビタミン剤、ドリンク剤には飲みやすくする為の糖分を沢山含んでいることが多いの

        です。

Bダイエット : 急激なダイエットは肝臓以外の体内に蓄積されている脂肪が一気に肝臓に集まってく

        る事になります。過食と全く同じ状態となってしまいます。





☆脂肪肝になると・・・?


 脂肪肝になると、肝細胞が脂肪でいっぱいになり細胞が膨らんで肝内の血管が圧迫され、肝臓内部の

血液の循環が悪くなる為、肝機能が低下してきます。その結果、身体がだるく感じたり、疲れやすくなった

りすることがあります。

 しかし多くの場合、初期の自覚症状はほとんどなく、健康診断などで偶然発見されることも少なくありま

せん。

 また、肝炎を合併しやすいという特徴もあり、アルコールの飲みすぎが原因で中性脂肪が溜まったアル

コール性脂肪肝の人は肝臓の繊維化が進むので肝硬変に進行しやすくなります。

さ ら に ・・・

 脂肪肝のある人は肝臓でうまく処理できなかった脂肪の燃えカスが血液に流れ出し、血栓が出来やすく

なる為、動脈硬化や高血圧になりやすく、心臓病・脳卒中のリスクも高い場合が多いので注意が必要で

す。脂肪肝の人の5年間の追跡調査には、動脈硬化による心筋梗塞、糖尿病など死に至る病を起こす

確率は正常の人に比べ2倍近い値を示しています。





☆予防には・・・?


 脂肪肝は原因を取り除けばほとんどが解消します。



  ◎太りすぎに注意!!

     @エネルギー制限

       ・低脂肪、高たんぱくのメニューを心がける。

     A運動

       ・摂取したエネルギーの消費に努める。

     B食事の工夫

       ・食事は一定の時間にとる・・・朝食抜きは逆効果。

       ・時間をかけてゆっくり食べる・・・満腹感を感じるまでに沢山食べ過ぎない。

       ・食物繊維の多い食品をとる・・・余分なコレステロールを吸着し排泄へと促す。

  ◎アルコールを飲みすぎない(原則は禁酒です!!)

  ◎基礎疾患を治す





《豆知識のコーナー》

〜非アルコール性脂肪肝(NASH)〜

 一般に脂肪肝は病気としての認識が無く、比較的安全なものと考えられてきまし

た。また、これまで脂肪肝のほとんどがアルコールに原因があると考えられてきま

した。

 しかし、近年アルコールをほとんど飲んだことがない人にも脂肪肝が発生し、ア

ルコール性肝障害に類似した所見を示すことが明らかになり、これを非アルコール

性脂肪肝(NASH)と呼んでいます。

 誘引として高脂血症、肥満、糖尿病が挙げられ、ライフスタイルの欧米化に伴い

患者数は増加しています。やはり、食べすぎ、飲みすぎに基づいた生活習慣病が

脂肪肝へと進行することが大きな原因で、これらを改善する為の努力が大切です。

 適度な運動をし、暴飲暴食・夜食は控えたいものです。





☆アルコール性肝障害とは・・・?


 お酒を飲みすぎる事により肝臓が負担を受け起こる病気の総称です。アルコー

ル性脂肪肝からアルコール性肝炎やアルコール性肝硬変などへ移行します。



アルコール性脂肪肝

≪状態≫

 肝細胞に中性脂肪が溜まり肥大化

 肝臓が全体的に腫れる

≪症状≫

 軽い腹部不快感、疲れやすい、食欲不振、やせ など


アルコール性肝硬変

≪状態≫

 肝臓の繊維化がどんどん進み肝臓の働きが低下

≪症状≫

 黄疸、疲れやすい、腹部不快感、吐き気、上腹部痛



 アルコール性肝障害は徐々に起こってきますが、アルコール性肝炎は急に症状が出る事も少なくあり

ません。強い黄疸、発熱、震え、意識混濁など精神症状を伴う事もあります。





☆アルコールの量について・・・



 (例)日本酒

  毎日約3合   ×   5年以上   で    アルコール性脂肪肝

  毎日約5合   ×   10年以上   で    アルコール性肝硬変



 になる可能性が高いとされてます。

  女性は男性よりアルコール性肝障害を起こしやすいといわれているので1日2合の飲酒が続いても肝

障害を引き起こす恐れがあります。

  また、人それぞれ個人差もありますので注意が必要です。





☆アルコール性肝障害を予防するには・・・?



 アルコールが原因の為、『飲酒を控える!』の一語につきます。既に肝障害が見られる場合には何を

おいても≪禁酒≫が必要です。



@禁酒!!

A良質なたんぱく質をしっかり摂る。

Bビタミン・ミネラルをたっぷり摂る。

C適正カロリーを心がける。

D食事は3食、時間も考えて。

E添加物、加工食品、インスタント食品をなるべく避ける。

F砂糖は控えめに・・・





☆あなたの肝臓に脂肪はついていませんか・・・?



 肝機能は血液検査、また腹部超音波(エコー)検査により検査することができます。

 当医師会保健医療センターでは巡回または施設内健診によりこれらを行っております。どうぞお気軽に

お問い合わせ頂き、ご自分の肝臓について知る機会をつくってみてはいかがでしょうか!?




検査項目検査でわかること
総蛋白

アルブミン

栄養状態、肝臓病や腎臓病などがわかります。肝硬変などで肝臓の働きが低下すると低値になります。
A/G比アルブミンとグロブリンの量の比率です。肝機能が低下すると低値を示します。
総ビリルビン黄疸の指標で、主に肝臓障害などにより高値になります。
ZTT肝硬変や慢性肝炎、また膠原病などでも高値となります。
ALP肝臓や胆道系に異常があって胆汁の流れが悪くなると高値になります。その他骨などの多くの臓器にも存在します。
AST(GOT)

ALT(GPT)

肝細胞の破壊によって高値となります。基準値より高くなるほど損傷の程度はひどくなります。
LD(LDH)肝臓の障害や破壊で高値となります。心臓、血液疾患でも高値となります。
γ-GT胆汁の流れが悪くなると高値となります。特にアルコール性肝障害のとき、著しく上昇します。
コリンエステラーゼ肝細胞の働きが低下すると低値となります。ただし、脂肪肝のときは高値となります。






 メタボリックシンドロームとは、不規則な食生活や運動不足などが積み重なった結果、必要以上に身体

の中に脂を溜めてしまい「肥満、高脂血症、高血糖、高血圧」といった「動脈硬化」の危険因子をいくつも

併せもった状態のことをいいます。

 メタボリックシンドロームそのものは病気ではないので、診断基準に当てはまっても、痛いなどといった目

に見える形では症状はわかりません。




 すでに多くの人がこのメタボリックシンドロームの状態や、その入り口に差し掛かっているようです。

 自分で気付いてなくても可能性は十分にあります。生活習慣を見直してお腹に脂肪がたまらないように

気を付けるようにしましょう。

 健康診断や人間ドックは有効な予防や早期発見の手段の一つとなり、自分の検査値を知ることはとても

重要です。