糖尿病



  わが国の糖尿病患者数は年々、増え続けています。

最近よく耳にするメタボリックシンドロームとは、運動不足や食べ過ぎにより内臓脂肪が過剰に蓄積し、高血糖、    

高血圧、高脂血症のうち2つ以上を合併した状態を言います。

  この状態を放置しておくと、高血糖が糖尿病を引き起こすことになりかねません。つまり、メタボリックシンド

ロームは『糖尿病予備軍』であると言えるでしょう。

  国内の糖尿病患者数が増加し続けている原因の多くは、メタボリックシンドロームの増加が関係していると考

えられます。






★内臓脂肪と皮下脂肪の違い




 皮下脂肪は皮膚の下に蓄積された脂肪で、お腹をつまむとつまめる脂肪です。一方、内臓脂肪は腹部の臓器と

臓器の間に蓄積した脂肪です。見た目にも分かりにくいことから、隠れ肥満と言われる人は、この内臓脂肪が多く

ついていることが多いのです。皮下脂肪はエネルギー源として、ある程度必要な脂肪ですが、内臓脂肪は余分な

エネルギーで生活習慣病などの様々な病気を引き起こす原因となります。





★なぜ血糖が高くなるの?




 糖尿病は、糖分の調節がうまくいかず、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が高くなってしまう病気です。

 私たちが食事(炭水化物)を摂ると、お腹で消化されブドウ糖に変わります。そして、ブドウ糖が血液中に吸収され

血糖値が上昇します。このとき、すい臓からインスリンというホルモンが分泌され血糖値を下げます。   

 インスリンが分泌されなかったり、分泌されてもその働きが十分でないと、血糖値が上昇したままとなり血管や   

神経に悪い影響を及ぼします。   

 内臓脂肪がたまると、インスリンの働きが十分でなくなり、それを補うためにインスリンが分泌されるようになり   

ます。この状態が長く続くと、次第にすい臓が疲労して、インスリンの分泌が低下し血糖の調整がうまくいかなく   

なってしまうのです。





★糖尿病を発症しやすい原因は・・・?


  

次のような原因によって糖尿病が発症しやすくなります。  

  遺伝(血縁者に糖尿病になった人がいませんか?)

  肥満(20歳代の健康時の体重より1割以上増えていませんか?)

  運動不足(適度な運動をしていますか?)

  ストレス(強いストレスを感じていませんか?)

  暴飲暴食

  加齢





★症状は・・・?


 糖尿病の症状は、気付きにくく、血糖値が多少高いくらいではまったく症状のない人がほとんどです。

 高血糖の自覚症状として以下のような症状が挙げられます。 


のどが渇く     体がだるくなる     急激な体重の減少     尿の量と回数が多くなる


 思い当たる症状がないからといって安心はできません。

 自覚症状がないまま病状が進んでいく人も少なくないからです。





★恐ろしい合併症


 症状がなくても糖尿病は徐々に進行し、恐ろしい合併症を引き起こします。

 糖尿病の本当の怖さはこの合併症です。

 代表的な合併症を挙げると、以下のようなものがあります。



  ○糖尿病神経障害

    合併症の中で最も早く出てくるのがこれです。中心となる末梢神経障害の足や手の症状の

    出かたは様々で、手足のしびれ、けがや火傷の痛みに気付かないなどです。そのほか筋肉

    の萎縮、筋力の低下や胃腸の不調、立ちくらみ、発汗異常など様々な自律神経障害の症状

    も現れます。

  ○糖尿病網膜症

    目の底にある網膜という部分の血管が悪くなり、視力が弱まります。なかには失明する場合

    もあります。また、白内障になる人も多いといわれています。

  ○糖尿病腎症

    おしっこを作る腎臓の糸球体という部分の毛細血管が悪くなり、だんだんおしっこが作れなく

    なります。すると人工透析といって、機械で血液の不要な成分をろ過して、機械でおしっこを   

    作らなければなりません。週に2〜3回、病院などで透析を受けるようになるので、日常生活に   

    大きな影響を及ぼします。現在、人工気透析になる原因の1位がこの糖尿病腎症です。





 また、メタボリックシンドロームなどから進行する動脈硬化も糖尿病の合併症のうちの1つです。

 動脈硬化が進行すると、心筋梗塞脳梗塞など命を左右する病気を引き起こすことになります。





★どのような検査をするの?



  ●糖尿病かどうか確かめる検査

  尿糖検査

    尿に糖が出ていないかを調べる検査です。

    血糖値が高くなると、ブドウ糖が尿中に出てきます。

  血糖検査

    12時間以上何も食べていない状態(空腹時)の血糖値をはかり、糖尿病の疑いがないか確かめます。

     正常時:空腹時110mg/dl未満

    糖尿病型:空腹時126mg/dl以上

  ブドウ糖負荷試験

    空腹時採血の後で、トレーランGという甘い検査用の液体を飲み、負荷後30分、60分、120分後に

    採血して血糖値を測定する検査です。

  

  ●血糖値のコントロールをみる検査

  グリコヘモグロビン検査

    過去1〜2ヶ月間の平均血糖値が分かります。検査するタイミングが食前か食後かなどの条件に

    左右されないため、日頃の治療の良し悪しをチェックするのに役立ちます。





  最近の研究では、食後の高血糖は動脈硬化の進行とより強い相関関係があることがわかってきました。

  そして、メタボリックシンドロームに該当するような糖尿病予備軍では、食前の血糖値は正常なのに、食後の血糖値が   

 高くなっていることがよくみられます。

  糖尿病でないかどうか、または糖尿病予備軍でないかどうか、調べてみてはどうでしょうか。





★予防と治療


  糖尿病は一度なってしまうと、決して治ることはありません。血糖値が正常化したからといっても、それは、一時的なこと

 であり、糖尿病は治っていないのです。   

  血糖をコントロールするためには、やはり食事療法と運動療法をしっかり続けることが大切です。糖尿病予備軍の人は、

 糖尿病にならないように、すでに糖尿病になってしまった人も、合併症を起こさないように生活習慣を見直しましょう。




 ☆★☆生活習慣改善アドバイス☆★☆

   栄養のバランスを考えた食事にする

   3回食とし、一度にたくさん食べない

   野菜や海藻類など食物繊維を多く含んだ食品を積極的に摂る

   夕食は脂肪分の多い料理を控える   

   夜食は避ける

   砂糖含有量の多い食品、飲料は控える

   アルコールは少量にとどめる

   肥満にならないよう注意する

   ストレスをためない

   適度な運動を継続する   

   禁煙する





  メタボリックシンドロームに該当する糖尿病の場合、治療はまず、減量です!

  糖尿病の食事療法と運動療法でウエストサイズを減少しましょう。内臓脂肪が減ると、血糖値を下げるインスリンの   

 働きがよくなります。薬物療法は、内臓脂肪の蓄積を解消しても血糖値が目標値まで下がらない場合に始めると効果

 的です。





★まずは検査を受けましょう!


  自覚症状の乏しい糖尿病は、健診を受けて血糖値を調べない限り『早期発見・早期治療』は難しいといえます。

自覚症状が現れたときには、病状はかなり進行していると考えられます。

  手遅れにならない為にも、定期的に健康診断を受け、尿糖、血糖値のチェックをしましょう。



  検査につきましては、当センター、またはお近くの診療所までお気軽にご相談ください。



  また、11月18日(日) 松阪看護専門学校において、『減らそう!増え続ける糖尿病』と題する市民公開講座を予定して   

おります。専門医による相談コーナーや血糖の無料測定コーナーもございますので、ぜひ足をお運びください。