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健康アドバイス27
今から約20年前のバブル全盛の時代に「24時間戦えますか」のキャッチコピーで流行ったドリンク剤のCMを覚えていますか? 当時はモーレツに仕事ばかりに追われての24時間でしたが、現代は社会全体が24時間休みなく活動を続ける「24時間社会」。コンビニだけでなく、一般のスーパーや飲食店から書店、レンタカー、スポーツジムさらには郵便局まで・・・
仕事だけでなく生活も24時間頑張らなければいけない人のために、深夜の時間帯は赤字でも多種多様なサービスを24時間何時でも提供するというサービス自体が知名度アップに貢献するためでしょうが、それに伴って交代勤務者や夜勤労働者が更に増加し、「24時間社会」はますます活性化していきます。これって、人の生体リズムに逆らっているとは思いません?
アメリカのスリーマイル島で起きた原子炉爆発事故(1979年)、チェルノブイリ原子力発電所の放射能漏れ事故(1986年)、スペースシャトルのチャレンジャー号爆発事故(1986年)、これらの大事故は、睡眠時無呼吸症候群(※)によるスタッフの睡眠不足が原因と考えられています。また、交通事故死の3倍に達するといわれるアメリカの医療事故死の最大の原因として、医療従事者の睡眠不足があげられています。
このように、睡眠障害や夜勤労働による睡眠不足が大きな事故を招くことは明らかで、利便性を追求した「24時間社会」を理想の社会にするためにも、『睡眠』についての正しい理解が不可欠です。
日本人の平均睡眠時間は、この50年間で8時間以上から7時間半を割り込むまでに短縮しています。ナポレオンは、1日に3時間しか眠らなかったことで有名ですが、馬上でよく居眠りをしていたとも言われています。エジソンの睡眠時間は4時間だったそうですが、イスに腰掛けながらよく居眠りをしていたとの事です。アインシュタインは1日10時間眠っていたようで、適切な睡眠時間は人それぞれですが、日本成人のおよそ5人に1人は不眠の訴えをもっており、高齢者ほど頻度が高いといわれております。
※睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん):眠っている時に、数秒〜数十秒呼吸が止まり、息苦しくなって目覚めることを一晩に数回くり返す病気
高血圧・脳卒中・虚血性心疾患や糖尿病などに関わる生活習慣は、食事・運動それに睡眠!不眠は、糖尿病や高血圧の危険因子であり、糖尿病などの人には不眠が多く見受けられます。
また、睡眠時無呼吸症候群を呈する人は、肥満が原因のメタボリックシンドロームである割合が高く、睡眠習慣と生活習慣病は密接に関連しております。睡眠時無呼吸症候群の人は夜間睡眠中の血圧が高く、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすい傾向にあります。睡眠不足が交感神経を活性化し、血糖上昇、血圧上昇を引き起こします。高血圧の人は頭重感、肩凝り、イライラ、のぼせなどの症状のために夜間不眠に陥り易く、ますます悪循環となり、糖尿病の人は神経障害でしびれなどが起こり、不眠になりやすくなります。この様に高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロームと不眠は、相互に悪影響を与えることは明らかです。
うつ病は不眠の最も大きな原因の一つです。また、不眠はうつ病の9割にみられる症状です。不眠は慢性化しやすく、慢性化した不眠の人は不眠のない人に比べてうつ病発症の危険が数倍高まるといわれています。
我が国の自殺者数は平成10年より毎年3万人を超え、特に40代・50代男性にピークがあるのが特徴です。中年男性のうつ病には不眠はほぼ必発であるため、不眠に早期に気づき、うつ病を見逃さないことが中年男性の自殺予防に重要です。うつ病早期発見・早期治療のために、平成22年2月から内閣府が行っている睡眠キャンペーン『お父さん眠れてる? 2週間以上の不眠はうつかも』。がんばっているお父さんが2週間以上ちゃんと眠れていない様なら、早くかかりつけ医に相談する様、ぜひ勧めてあげて下さい。
人間には、体内時計が備わっており、睡眠(ねむること)・覚醒(目をさますこと)のリズム(慨日リズム)が日常の生活リズムと一致しない場合に不眠が生じやすくなります。体内時計は1日24.2時間で働いており、朝の光を浴びることにより24時間リズムにリセットされるため、夜なかなか眠れずに朝起きづらくても、朝日を浴びて慨日リズムを正常に保つ事が大切!
高齢者などでは、睡眠薬は、ふらつき等の副作用による転倒・骨折の危険性もあり使いづらいものです。また、睡眠時無呼吸症候群では睡眠薬による呼吸抑制も心配されます。最近、新しい睡眠薬として、慨日リズムを整えるメラトニン受容体アゴニスト(睡眠を促進する作用があると考えられているメラトニン様の作用を有するもの)が登場しております。従来の睡眠薬によく見受けられるふらつき等の副作用が少なく、眠気を起こさせる作用を有しており、高齢者や慢性呼吸器疾患のある方にも比較的安心して使えるのが特徴です。一度、かかりつけ医の先生に御相談下さい。
『食事』・『運動』に続く第3の生活習慣は『睡眠』!
『お父さん眠れてる?』