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健康アドバイス62
「皮膚にも“がん”があるのですね」とよく言われることがあります。皮膚は表皮、真皮の2層から構成され、その下に皮下脂肪があります。表皮は皮膚表面に“垢(あか) ”をつくることで外敵から身を守る表皮細胞や、メラニン色素を産生するメラノサイトなどで構成されます。真皮は線維組織や血管、神経、毛包、脂腺、汗腺などの様々な細胞から成り立っています。皮膚にはこのような多様な細胞が存在し、その各々から多種多様な“がん”が発生します。
皮膚がんの多くは日光によくあたる顔面や四肢に発生する事が多いです。高齢者に多く発生しますので、高齢化社会の進行とともに、今後皮膚がんの発生増加が予想されます。
本日は、その中でも頻度が高く重要なものとして、5つの「皮膚がん」を紹介させていただきます。
1. 基底細胞癌(きていさいぼうがん)
基底細胞癌は、おもに顔面に発生する黒色の色素斑(しみ)や結節(かたまり)として発生することが多いです。きちんと切除すれば命に関わることは非常にまれですが、放置すると、拡大、深く浸潤し、骨を溶かすこともあります。
2. 日光角化腫/有棘細胞癌 (ゆうきょくさいぼうがん)
日光角化腫は主に顔面に生じる表皮内がん(皮膚表面に生じる早期がん)で、やや厚みのあるカサカサした皮疹になることが多いです。進行すると赤色の腫瘤(かたまり)をつくり、有棘細胞癌と呼ばれ、転移する可能性がでてきます。
3. ボーエン病
ボーエン病は、体幹に発生する事が多い表皮内がんです。カサカサとした外観を示すことが多く、見た目だけでは湿疹と間違えられることも多いです。診断には皮膚生検(皮膚の組織の一部を採取し、細胞の形態をみて診断する)が必要です。
4. 乳房外パジェット病
乳房外パジェット病は、おもに陰部に生じる汗腺のがんです。治りが悪い“いんきんたむし(股部白癬)”と間違って治療が続けられていたり、
“恥ずかしいから”と医療機関を受診しないうちに進行する事が多いです。陰部の皮疹は恥ずかしがらずに皮膚科専門医を早めに受診しましょう。
5. 悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)
悪性黒色腫はメラノサイトのがんで、皮膚がんの中で最も悪いタイプのがんです。日本人では足のうらや手指足趾、顔面に生じる事が多いです。黒色で色むらのある皮疹を見つけたときは良性のほくろとの鑑別が必要です。
皮膚がんの治療には、手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)などがありますが、基本は、大きくなる前、他の部位に転移する前に行う手術です。松阪市のある医療機関で、2019年からの約3年間に皮膚がんで手術を行った患者さんの約6割が80歳以上の方でした。「かず(歳)だから」「怖いから」「症状がないから」と言われることが多いのですが、出来るだけ早期に発見し、小さな手術で取ってしまうことが大切です。
皮膚科専門医を受診しましょう!
皮膚がんは皆さんのセルフチェックで早期発見が可能です。皮膚に生じたできものは、早めに皮膚科専門医を受診いただくことが、早期発見・早期治療には大切です。