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健康アドバイス65
我が国は、2017年に65歳以上の人口が21%を超え超高齢社会に突入しました。我が国では、がんが40年以上にわたって死因のトップであるが、高齢者では脳卒中と心血管病を合わせた死亡者数はがんの死亡者数とほぼ同じであり、後期高齢者になると循環器病の方ががんよりも多くなります。脳卒中を含めた循環器病の問題点は他にもあります。現在、我が国の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳と世界トップクラスでありますが、医学的に制限なく自立した生活ができる健康寿命と約10年の差があります。つまり、10年は介助下、寝たきりで最期をすごすということになります。健康寿命の延伸を目標とする我が国においてこれは大きな問題です。こういった背景もあり、2019年12月に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が施行されました。これにより、都道府県の実情に合わせ、循環器病に対する対策を多職種で進めていくことになります。
今回、高齢者の脳卒中を含めた循環器病の原因となる不整脈「心房細動」についてお話します。
Q. 心房細動ってなに?
A. 心房細動は最も頻度が高い不整脈で、心臓の心房が不規則に震えて正常に作動できなくなった状態です。高齢者に多くみられる不整脈であり、生活習慣病(糖尿病や高血圧など)を持つ方では、心房細動が起こりやすいことがわかっており、患者さんは年々増加しています。
左図が正常時、右図が心房細動時です。心房細動時は心房が不規則に震えています。
Q. 心房細動ってどうやってみつけるの?
A. 12誘導心電図で診断されます。これは、医療機関を受診しないとできませんが、最近では、血圧計、携帯心電計やスマートウォッチなど、補助的なデバイスが発売されています。また、検脈も非常に有効と報告されています。
手首の内側の親指側に3本の指をあて、脈をとります。脈が規則正しく打っていれば正常です。不規則に乱れていたり、早くてとりづらい場合は心房細動が疑われます。
Q. 心房細動の症状とは?
A. 動悸、息切れ、倦怠感、ふらつきや失神などきわめて多彩であり、同一患者さんにおいても変動すると言われています。また、診断されるまで症状がなかった患者さんも、診断後は動悸を訴えるようになったりと、心理的、身体的要因の両者が影響すると考えられています。10-40%の患者さんは、無症状と言われており、 症状がないから予後良好と言うわけではありません。
Q. 心房細動ってこわい?
A. 突然死に至る病気ではありませんが、放っておくと、脳梗塞、心不全を招くことが あります。また、最近では、認知症のリスクが高まると報告されています。
Q. 心房細動の治療はどんなものがあるの?
A. 心房細動では、血栓ができやすくなりますので、リスクのある人は血栓を予防するための薬(@抗凝固療法)を服用します。また、心拍数が速くなったり、リズムが不整になることで、心臓に余計な負担がかかってしまいます。そこで、心拍数をコントロールしたり(Aレート治療)、心房細動が起こらないように(Bリズム治療)したりします。
下記の表で1点以上ある方で、リスクがある人は抗凝固薬を内服する必要があります。
Aレート治療
心房細動中に心室に伝わる電気信号を減らして、心拍数を正常に近づけます。心房が速く小刻みに動いている状態は変わりありませんが、心拍数を抑えることで、自覚症状を改善し、心不全をコントロールすることを目的としています。主に内服薬を用いた治療となります。
Bリズム治療
心房の異常な興奮を抑え、拍動を正常なリズムに整えます。薬物治療と非薬物治療があり、前者は抗不整脈薬、後者はカテーテルアブレーションが用いられます。抗不整脈薬に比べ、カテーテルアブレーションの方が、正常なリズムを整える効果は高く、心機能改善効果、脳卒中予防、さらには認知症予防、生命予後改善などの報告がなされています。しかし、高齢者、左心房拡大、長期持続性心房細動に対するカテーテルアブレーションの効果は限定的であるため、専門医との相談が必要と考えます。
カテーテルアブレーション治療
カテーテルアブレーションでは、異常な興奮の原因となる電気信号が出る部分の心臓の筋肉に、高周波カテーテル(約40〜50℃)あるいは、冷凍バルーンカテーテル(ー40〜ー60℃)を使って、やけどを作り、無秩序な電気信号を抑えるようにします。高周波を用いるか、冷凍バルーンを用いるかは、心房細動の持続期間や左心房の形態によって選択します。
カテーテルアブレーションを行うときは、局所麻酔をかけて、太ももの付け根や首の静脈からカテーテルを入れます。そこから、カテーテルを左心房に到達させ、治療を行います。手術時間は2〜4時間です。カテーテルを入れる治療創が小さいため、体への負担は小さく、入院日数も4〜5日以内と短くてすみます。
合併症は、1〜2%と報告されています。心臓や血管を傷つけることや、心臓の中にあった血栓による脳梗塞、食道の障害などです。専門機関へ受診を
スマートウォッチ、検脈、健康診断で異常、心房細動を指摘された場合は、一度専門機関を受診し相談することをお勧めします。