ホーム > 健康アドバイス17
健康アドバイス17
国語辞典でストレスという言葉を引いてみますと「生体にひずみの生じた状態の意。寒冷・外傷・精神的ショックなどによって起こる精神的緊張や生体内の非特異的な防衛反応。また、その要因となる刺激や状況」とあります。ストレスとは、具体的には感情的興奮、心理的重圧、天災や事故、肉体的な負担、急激な温度、湿度、気圧の変化、肉親の死去、失業などと考えれば良いでしょう。
人間の体は、自律神経系(交感神経 副交感神経)、免疫系、内分泌系という大きく分けて3つの仕組みによって常に一定の状態になるように調節されています。ストレスはこれらの仕組みをかき乱します。
ストレスというと心の病気を想像する方が多いと思われますが、ごく普通にある内科の病気にもストレスが密接に関係しています。それらをいくつかの例を挙げてご説明します。
◆ストレスで風邪をひきやすくなる?
ストレスは体の抵抗力である免疫力も低下させることがわかっています。ストレスがかかった状態が長くなると当然風邪を初めとする感染症にかかりやすくなります。
◆花粉症もストレスが原因?
スギの花粉が直接的な原因ですが、免疫系はウイルスや細菌をはじめとする異物の侵入から体を守るための防御機能を司るシステムで、正常に働かないとアレルギーの原因になったりします。
◆ストレスで血圧はあがる?
ストレスで血圧が上がるというのは、主として自律神経系の交感神経の働きが副交感神経と比べて強くなるために、血管が収縮したり、心臓の働きを強くしたりすることで説明できます。このような状態が長く続きますと、当然、心筋梗塞や脳卒中などの血管障害を起こしやすくなります。
◆ストレスでやせる?太る?
ストレスは太る原因にもやせる原因にもなります。胃腸が丈夫な人はストレスで交感神経が優位な状況が続きますと、副交感神経を働かせてバランスをとろうとします。胃や腸には副交感神経があり、胃腸を働かせる(食べる)事で交感神経と副交感神経のバランスをとろうとして食べ過ぎてしまうことが起こり太ります。胃腸が丈夫でない人は交感神経の働きが強くなりすぎると、胃腸の働きが弱り食べることができなくなりやせてしまいます。
◆ストレスでコレステロールや血糖もあがる?
意外に思われると思いますが、ストレスがかかり、交感神経が興奮した状態が続きますとコレステロールや血糖値にも影響が出てきます。それは、交感神経を介しての反応と副腎皮質ホルモンが盛んに作られるようになるためコレステロールの合成も盛んになります。内分泌系がストレスでかき乱されたために起こると考えらえます。
◆ストレスと生理不順
女性の方で、ストレスで生理不順が引き起こされることを経験されている方も多いと思います。これもストレスによって内分泌系がかき乱されることで起こると考えられます。
◆ストレスと便秘、下痢
ストレスによって便秘や下痢や腹痛を繰り返す状態を過敏性腸症候群と言います。これも交感神経と副交感神経のバランスの異常に起因するストレス病と考えられています。
■ストレスとうつ病
過度のストレスが原因で引き起こされる心の病気で代表的なものはうつ病です。うつ病と言われることは大変不名誉なことと一般では考えられているようですが、軽度のうつ病は一般の内科でも頻繁にみられるものです。特に高齢者の病気は長期化することが多く、その過程でうつ病を併発することが多くなります。うつ病とは「心の疲れがたまり、エネルギーがなくなった状態」であると考えられます。またこのうつ病の存在により、内科疾患の治療がうまくいかないことや十分な効果が上がらないことなどは頻繁に経験されます。
◆ストレスによるうつ病の治療は休養が大切
ストレスによるうつ病の治療は休養が最も重要です。ところが、現在ではうつ病になっても簡単に休める人は少数でしょう。特にストレスによりうつ病になる人の多くは、几帳面で仕事をきちんとこなす有能な人に多く、自分が長期の休養を取ることが罪悪だと考える傾向があります。その結果抗うつ剤を使用しながら勤務を続ける人が多い印象があります。
◆ストレスと仮面うつ病
仮面うつ病とは、うつ病の症状である「やる気がでない」「消えてしまいたい」「憂鬱である」などの精神症状が目立たず、頭痛や嘔吐、嘔気、肩こり、腹痛など身体症状が多く出現するうつ病の事です。身体症状が主で内科をあちこち受診され、何処も異常がないと言われた人の一部分がこれに相当すると思われます。抗うつ剤による治療が有効で抗うつ剤を飲みたくないからと普通の安定剤だけで治療を続けると症状は良くならないので注意が必要です。ここでも休養が最も大切なのは言うまでもありません。
現在はストレス社会であり、ストレスと無縁な生活をおくることはできません。そのためにストレスにどう対処するかで私たちの健康は大きく左右されると言っても過言ではありません。そのために必要なことは何か考えていきたいと思います。
◆ストレスに気づいていますか?
ストレスなんて無縁だと思っている方も多いと思います。自分では気づいていなくても、長時間の過重な労働、休暇をほとんど取っていない、アルコールやタバコの量が増えた、睡眠時間が短い、体重が増えてきたなどがあればストレスによる可能性があります。ご自分のストレスをしっかりと自覚することから対策は始まります。
◆ストレス対策の基本
早寝早起き、規則的な食事、適度の運動、家庭環境(よい夫婦関係や親子関係)は大切です。意外に思われるかもしれませんが、ストレス対策の基本は、簡単なことなのです。
◆職場のストレス対策は?
配置転換、転勤、労働条件の改善など環境の調整がありますが自分一人でできることでもなく会社の理解と協力が必要です。また現実問題として中小の事業所では対応困難な場合も多いと思います。自らの考え方や性格傾向を良く自覚すると、少しでもストレスを軽減することができる場合もあります。
◆ストレスに強い心をつくる
ストレスを受けやすい人とはどんな性格の人でしょうか。まじめで几帳面な性格、内向的でおとなしい性格、頑固で厳しい性格、心配性な性格などがあげられます。自分の性格は簡単に変えられるものではありません。しかし、自分の性格傾向を自覚し少しずつでも考え方を変えるなどして、心や体をストレスから強くすることは取り組んでみる価値のあることだと思います。ストレスに強い人は、柔軟な考え方ができる人です。風をしなやかに受け流す柳のように柔らかい考え方を身につけるように努力するとよいかもしれません。
◆予防と治療のカギ
ストレスを継続させず、休養したり、趣味をもったり、運動したりすることが欠かせません。ストレスの原因となることを一人で悩むのではなく、何でも相談できる友人を持つことが望まれます。考え方を変えることも重要です。以前は大事なことと思っていても数年経つとあまり大事でなかったことがずいぶんある事に気づかれている方は多いと思います。
小さな事にくよくよせず、取り越し苦労をしないことが一番大切ではないかと思います。
ストレスから来る病気や体の不調を予防するためには、日頃から何でも相談できる「かかりつけ医」を持つことも重要です。時として専門医と連携しあなたの心身の健康を守る重要な役割を果たしてくれる事でしょう。