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健康アドバイス48
最近「乳がん」の話をよく耳にしませんか?
国立がん研究センターの調べでは、女性が罹患する「がん」のうち、一番多いのが乳がんで、現在11人に1人が生涯のうちに乳がんを患うとされています。
『国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」』より
上のグラフは、人口10万人あたりに病気を発症する人の数を示したものです。
現在死亡数が多い5種類のがんの統計をグラフに示しました。
他の種類の癌に比べると、40-60代の若い方の罹患が多いのが乳がんの特徴です。
一般的に「危険因子」と言われているのは
・年齢が40歳以上
・初潮が早く(11歳以下)、閉経が遅い(55歳以上)
・初産が30歳以上
・出産経験がない
・肥満
・家族(祖母・母・姉妹)に乳がんや卵巣がんになった人がいる:遺伝性乳がん卵巣がん症候群
・更年期症状に対するホルモン補充療法を受けたことがある。
などです。
最近では、遺伝的に乳がんになりやすい方がいることも分かってきました(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)。 特に血縁者に若くして乳がん・卵巣がんになった方が多いという方は特に注意が必要です。
でも、11人に1人がかかる病気です。「乳がんにはならない」と言える人は誰もいません。誰でもかかる可能性がある病気です。
・しこり(石のように硬い、と表現されることもありますが、実際にはグミのような感触のものや、石とまでいえないもののなんとなく硬い、などいろいろあります)
・乳頭から血(赤-茶褐色の液体)が出る
・乳房に左右差がある、乳房の一部に引きつれ、えくぼがある。
・特に初期の状態では痛みを伴わないことがほとんどです。
「がん」と聞くと不治の病のような気もしてしまいますが、早期発見であれば、治る可能性が高いのが乳がんです。現在の治療成績は、しこりの大きさが2cmまででリンパ節転移がない早期がんであれば、10年生存率は90%以上です。
乳がんの治療は、病気の状態に応じて、手術・薬物療法・放射線治療を組み合わせて行われるのが一般的です。
●手術
乳房温存(部分的に病気を切除する)・乳房切除(乳房を全部切除する)があります。最近では乳房切除の際に、胸のふくらみを作り直す乳房再建が行われることも増えてきました。
病気の状態に応じて勧められる手術方法は異なるため、医師と相談の上、決定します。
*乳房に傷をつけたくない患者さんも多く、ラジオ波熱焼灼療法・凍結療法・集束超音波などの治療も開発されていますが、現時点では実験段階の治療であり、一般的ではありません。
●薬物療法
化学療法(抗がん剤・分子標的治療薬)と内分泌療法(ホルモン療法)があります。乳がんは病気の大きさだけでなく、病気の性質もみて治療を行います。早期がんであっても、病気の性質によっては化学療法(抗がん剤)が勧められることもあります。
●放射線治療
乳房温存治療の場合、病気が進行している場合など、必要に応じて行われます。
早期発見であれば、手術が小さくてすむ(温存療法)、化学療法(抗がん剤)を使わなくてすむなどのメリットが増えます。
●マンモグラフィ検査
乳房専用のレントゲン検査です。マンモグラフィ検査の放射線量は十分に小さく、安全に病気を検出することができます。
(マンモグラフィでの病気の見え方の例)
マンモグラフィでは乳腺の見え方(構成)は個人・年齢によって異なります。
マンモグラフィで乳腺が白く映る高濃度乳房の方は若い方・授乳経験のない方に多く見られる傾向にあります。病気が隠れてしまいやすい可能性があります。
●超音波検査
超音波検査は、超音波で乳房病変がないかを探す検査です。被曝のない検査で、日本では従来超音波検査が比較的簡単に行われてきた経緯もあり、受けやすい検査でもあります。マンモグラフィに比べると、良性の病変(線維腺腫やのう胞など)が見えやすく、また良性の病変であっても悪性と紛らわしく見えてしまう病変もあります。検査者にはある程度の慣れが求められます。
◆乳がん検診についてよく聞かれる質問
Q:血液検査(腫瘍マーカー)では乳がんは見つからないの?
早期発見は困難なことが多いです。まだ実用的ではありません。
Q:検診を受ける期間は?
現在厚生労働省からは「40歳以上2年に1回」の乳がん検診が推奨されています。
検診の目的は「死亡者を減らす」ことにあり、専門家によって、「乳がんで命を亡くなる人を減らす」ことを目標に考えられています。
より早期に見つかれば、治療方法の選択肢(乳房温存治療が可能になる・抗がん剤治療をしなくて済む)が広がる可能性があります。
Q:妊娠中・授乳中の検診はどうしたらいいの?
妊娠中の方は、マンモグラフィの放射線量は胎児に影響を及ぼす量ではないと考えられますが、妊娠中の不必要なレントゲン検査はしないほうがいいと考えられ、お勧めできません。
超音波検査は、被曝がないので、妊娠中でも検査可能です。ただし、妊娠・授乳期の乳腺は変化が著しく、病気を見つけるのが難しく、乳がんの発見が遅れやすいと言われています。
何か気になる症状がある場合は、検診よりも精密検査機関での検査をお勧めします。