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健康アドバイス20
日本人の生活習慣の変化や高齢者の増加等により、近年、糖尿病・高血圧症・脂質異常症(血液中に含まれる脂質が過剰もしくは不足している状態)等の生活習慣病になっている人、或いは将来なりそうないわゆる予備軍と思われる人達が増加しており、現在、死亡原因に占める生活習慣病の割合は約6割と推計されております。日本人の三大死因はがん、心臓病、脳卒中とされております。心臓病と脳卒中を合わせた循環器病、これを引き起こす原因は「動脈硬化」と言われるもので、死の四重奏を奏でる最大の根源です。
生活習慣病の中でも、特に「肥満」「高血圧」「高脂血」「糖尿病」は『死の四重奏』と呼ばれています。それは、これらの病気が互いに合併しやすく、しかも合併することでより加速度的に動脈硬化や心筋梗塞などを引き起こしかねないからです。
「動脈硬化」の危険因子といえばコレステロールが有名ですが、最近の研究では、肥満(特に内臓のまわりに付着した脂肪)がさまざまな生活習慣病を引き起こし、それらの重なりが「動脈硬化」を起こすことがわかってきました。そのキーワードとなるのが『メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)』です。
このメタボリックシンドロームの存在により、心疾患、脳卒中の危険性が約2倍となっていると2005年内科学会雑誌で報告されております。
わが国の平均寿命は、世界でも高い水準にあります一方、高齢化の急速な進展に伴い疾病構造も変化し、疾病全体に占める虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病などの生活習慣病の割合は増加しています。
生活習慣病の中でも、特に、心疾患、脳血管疾患の発症が重要な危険因子である糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの有病者やその予備軍が増加しています。また、その発症前の段階であるメタボリックシンドロームが強く疑われる方と予備軍と考えられる方をあわせた割合は、男女とも40歳以上で高く、男性では2人に1人、女性では5人に1人という割合に達しています。
この様にこれら糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満、喫煙等が心疾患、脳血管疾患等循環器系疾患を引起す危険因子とされており、生活習慣病は、内臓脂肪の蓄積が原因となっていることが多く、肥満に加えて、高血糖、高血圧といったこれら危険因子状態が重複した場合には、脳血管疾患などの発症リスクが更に高くなります。
肥満ひとつのリスクさえも非肥満者と比較すると高率に様々な合併症が引き起こされております。
下図に示しました様に、糖尿病、高血圧は非肥満者より 5.0倍、2.5倍の高さで併せ持っている事が理解できると思います。
心臓の周りにあって心臓の筋肉に酸素、栄養素を供給する冠動脈、この動脈疾患(これを虚血性心疾患と言う)の合併率は確実に脂質異常症の一つであるコレステロール値が高くなるほど高率になっています。
又これら危険因子の数が増えるほど循環器疾患になるリスクが高まります。
一方、一循環器系疾患にかかるにとどまらず、夫々の疾患を併せ持つ危険性も高まると考えられています。
右図にある通り、脳血管疾患、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症の方100人のうち、3.3人はこれら全てを併せ持っておられ、7.3人は脳血管疾患と虚血性心疾患の合併が認められております。
メタボリックシンドロームに着目した健康診査
快適な健康状態で長生きするには、動脈硬化にならないようにする必要があるのは十分ご理解いただけたかと思います。
これまでは、中年期からの生活習慣病個々の病気の早期発見・早期治療を目的にした健康診断を行い、その結果によって二次予防対策を講じる事に重点が置かれておりましたが、更に一歩前進させて生活習慣の改善を目指す一次予防(健康増進・発病予防)対策、すなわちメタボリックシンドロームに着目した健康診査として平成18年の医療制度改革において、厚生労働省が特定健康診査、特定保健指導制度を打ち出しました。平成20年4月から、健康保険組合、国民健康保険などに対し、40歳以上の加入者を対象に健康診査(特定健康診査)および保健指導(特定保健指導)の実施を義務付け、全国的に統一した健診制度としたものです。
内臓脂肪の蓄積を早期に把握することにより、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病の予防を図ることを目的としています。
内臓脂肪は、適度な運動とバランスの取れた食事により減らしていくことが可能です。
このため、メタボリックシンドロームに該当する方とその予備軍の方については、運動指導によって適度な運動習慣を身に付け、バランスの取れた食生活になる様な改善を一人一人が行うことが、生活習慣病の予防につながることになります。
特定健康診査は、従来、老人保健事業が行ってきた基本健康診査の健診項目を基本としていますが、大きな変更点は、メタボリックシンドロームの診断基準で用いられる腹囲の測定が必須(ひっす)項目となったことと、総コレステロールの測定から、動脈硬化に大きく関係しているLDL-コレステロールの測定に替わったこと、の二つです。
腹囲は内臓脂肪程度と関係深い事がわかっており、この腹囲をベースに、質問表、血圧、血糖、脂質などの結果を加味して特定保健指導対象者を選ぶ事となっています。
この様に特定健康診査の結果から、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が多く期待できる方( メタボリックシンドロームに該当する方とその予備群の方) に対して、特定保健指導システムで生活習慣を見直すサポートをします。
特定保健指導には、リスクの程度に応じて、“動機付け支援”と“積極的支援”があり、保険者より改めて該当者には通知されることになっています。(よりリスクが高い方が積極的支援)
それぞれの保険者より受診券が配布され、特定健診を受ける様に勧奨されますので、是非より良い生活を過ごす為に積極的に健診を受け、メタボリックシンドローム、生活習慣病、動脈硬化性疾患と縁のない快適な生活への切符を手に入れようではありませんか。