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喫煙と生活習慣病
健康アドバイス1
◆はじめに◆
先進国日本も喫煙問題に関しては、欧米よりも遅れています。男性の喫煙率は低下しつつあるとは言え高く、若い女性の喫煙率は増加しつつあります。ある調査によると、喫煙経験のあるひとのうちタバコをやめたいと思ったことのある人は77.5%ありました。しかし、禁煙に成功したのはわずか11.0%でした。なぜ禁煙は難しいのでしょうか? タバコの煙に含まれるニコチンは体内に吸収され、脳内の報酬系(脳に快感をもたらす部位)に作用します。このことがタバコ依存につながります。『タバコを吸うと、気持ちが落ち着く』と、喫煙の効用を説く人は、すでにニコチン依存症になっていると自覚すべきです。
【受動喫煙の怖さ】
喫煙者が直接吸っている煙を『主流煙』、タバコの火のついた部分から立ち上がる紫煙を『副流煙』と呼びます。この副流煙を吸うことを受動喫煙といい、タバコの煙の中には4000種以上の化合物が含まれ、有害であることが分かっている物質は200種を超えます。
有害物質は、主流煙よりも副流煙の方に多く含まれ喫煙者と同じ部屋に居るだけで、副流煙により汚染された空気を吸ってしまう周りの人の健康も害されることがあるのです。喫煙者を夫とする妻の肺ガンによる死亡率は、非喫煙者を夫とする妻の1.5〜1.9倍とういう統計があります。最近20代の女性の喫煙者が増える傾向にありますが、子育て中のママが、子供の側でタバコを吸うのは決して許されません。
【喫煙と生活習慣病】
喫煙は好ましくない生活習慣の一つで一般に害というと、多くの人は肺ガンと答えます。喫煙が肺ガンの重要な危険因子になっていることは明らかで、肺以外にも喫煙は、口腔、喉頭、食道、胃、すい臓、腎臓、膀胱などの多くのガンの発生リスクを高めています。
喫煙の循環器系に及ぼす影響も忘れてはなりません。ニコチンの薬理作用に心拍数の増加、血圧上昇、末梢血管の収縮があり1日20本をこえる喫煙者の虚血性心疾患(挟心症、心筋梗塞)の発生率は、非喫煙者の3.2倍という報告があります。また、喫煙、高血圧症、高コレステロール血症と3つが重なると、高血圧症、高コレステロール血症の合併に比べて、虚血心疾患の発生は2倍になります。この他、喫煙は動脈硬化を助長し、身体の免疫力を低下させ老化を促進すると言われています。
その他、喫煙関連疾患には、呼吸系の疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫など)、消化器系疾患(胃、十二指腸潰瘍)などがあげられます。
【禁煙を成功させるための方法】
思いきって一気にやめる『断煙』か、少しずつ減らしていく『減煙』か、どちらがいいのでしょう?『減煙』の方法では、1日12本までは減らせても、それ以上は困難という調査があります。まず、明確な動機づけをして断煙する方がいいと思われます。タバコ依存は、ニコチンによる薬物依存だという話は最初にしました。ですから、タバコ以外でニコチンを体内に入れてあげれば、禁断症状の恐怖はなくなります。ニコチンを体内に入れる方法として、ニコチンガムと、ニコチン貼り薬があります。かかりつけ医に相談して使用してください。もし1回目の禁煙で失敗しても何度もチャレンジすることが成功につながります。
◆おわりに◆
肺ガンでは、毎日喫煙する人の死亡率は非喫煙者の4倍以上ですが、禁煙5年後には1.61倍まで下がります。非喫煙者の死亡率に戻るには、禁煙以前の喫煙期間が短い程速いことも明らかです。すなわち、禁煙はなるべく早く始めたほうがいいということになります。
公共の場における『分煙』が叫ばれる昨今、個人も社会も禁煙に関心を持たざるを得なくなりつつあります。一人でも多くの人が、タバコのない世界の快適さを実感できる21世紀にしたいものです。