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健康アドバイス67
脳内の神経伝達物質の1つであるドパミンが不足し、手足のふるえ、ぎこちない動作、小刻み歩行などの症状があらわれる病気です。ドパミンは運動の調節にかかわる物質で、ドパミンの不足は脳の黒質(こくしつ)という部分の神経細胞が減少するために起こりますが、その原因はまだ分かっていません(図1)。
10万人に100人〜180人くらいです。
高齢になるほど発症率が高くなり、65歳以上では約100人に1人にのぼります。90%の患者さんが遺伝と関係のない孤発性です。
4大症状といわれる特徴的な症状があります。
(1) 手足のふるえ
安静にしている状態で、手や足がふるえる。
(2) 筋肉の緊張異常
関節を曲げ伸ばししたとき、筋肉が固く緊張し、抵抗を感じてぎこちない動きになる。
(3) 緩慢な動作
動作が遅くなったり、動作そのものが少なくなる。顔の表情も乏しくなる。
(4) 姿勢制御の障害
からだが傾いたとき、姿勢をうまく立て直せず転びやすくなる。
4大症状以外にも様々な症状がでることがあります。
・姿勢の異常:腰が曲がる。ななめに傾く など。
・自律神経の障害:便秘、排尿障害、立ちくらみ、多汗 など。
・感覚の異常:手足の痛みやしびれ、臭いが鈍くなる など。
・精神・認知機能の異常:抑うつ、思考が鈍くなる など。
・睡眠障害:不眠、日中の眠気、睡眠中に腕や足を大きく動かす など。
こうした多くの症状がでるので、最近ではパーキンソン病を全身病としてとらえるようになってきました。
パーキンソン病の診断は、問診から始まり、神経学的診察でパーキンソン病に特徴的な症状があるかを調べます。そして他の病気ではないことを確認するために画像診断などの検査を行います。画像診断には脳の形を調べるCT/MRI検査や脳内のドパミンの異常をしらべるドパミントランスポーターシンチなどがあります。
また、パーキンソン病の薬が効くかどうかも診断には重要です。
そのためしばらく経過を追って診断につなげます。当初、パーキンソン病のような症状であってものちに別の病気だと判明することがあります。
パーキンソン病の治療は減少したドパミンを補充する内服薬が基本で、脳内でドパミンに変化するレボドパ製剤が主役です。ドパミンに似た作用をもつドパミンアゴニスト、ドパミンの作用を長持ちさせる薬、ドパミンの放出を促す薬などを併用することもあります。
内服薬で症状のコントロールが難しくなったら、手術する方法もあります。脳の目標部位に電極を埋め込み、電気的刺激を与えて機能を改善する方法(脳深部刺激療法)などがあります。
また、パーキンソン病では早期からの運動療法が有効です。日常生活で意図的に身体を動かすこと、趣味を生かして楽しみながら行える運動をすること、ストレッチや筋トレも行うとよいでしょう。
高齢化に伴い世界的にパーキンソン病が急増する状況は「パーキンソン病パンデミック」と呼ばれ注目されています(図2)。
パーキンソン病は高齢者ではけっしてまれな病気ではありません。
片方の手足のふるえや動きの鈍さ、ぎこちなさを単なる老化や体調が悪いだけととらえず、症状が続く場合は専門医を受診してください。
パーキンソン病と診断されても現在では有効な治療があること、多くの同病の仲間がいることを心にとどめ、人生を積極的に楽しむ姿勢を忘れずに、明るい気持ちで前向きに治療に取り組むことが大切です。
パーキンソン病の推定患者数および予測患者数