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生活習慣病としての高血圧症について
健康アドバイス5
◆はじめに◆
生活習慣病の中で最も重要で、しかも根幹をなす高血圧症について最後のシリーズとして話を進めて参ります。 前々回に種々の生活習慣病となる疾病を取り上げておりますが、生活習慣病の中で中心的なものが高血圧症であり、又罹患者もこの疾病が多数を占めております。
【高血圧の成因について】
特に原因らしきものがなく、遺伝的素因、環境素因(例えば食塩摂取習慣・ストレス)から来る本態性高血圧症が高血圧症の95%と大多数を占めています。他は原因のある、いわゆる二次性高血圧と言われるものです。腎性高血圧(腎臓疾患由来:慢性腎炎等)、腎血管性高血圧、ホルモン臓器疾患性(内分泌性)高血圧等が挙げられます。
この様に原因を取り除いても高血圧症が治らない本態性高血圧においては、適切な生活習慣の中で適正な血圧にコントロールするのが基本的方法です。しかしどうしても適正血圧にならない場合、その補助的手段として降圧剤という薬物療法が用いられます。飲む薬が根本的に高血圧を治すのではなく、適正血圧値に下げてコントロールしていると言うことを忘れないようにして下さい。健康を維持させるためにあくまで補助的に内服剤を服用しているのだという認識をもって高血圧管理を受けて頂きたいと思います。
【高血圧値の考え方】
これまでは単に(年齢+90)mmHg 以上になると血圧が高いと言われておりました。だから70歳以上の方は160 mmHg 以上は問題だと考えられ、それ以下であれば余り問題視されなかった時代もありました。時代が移り、その後 150/90 mmHgを一応の目安とされる時期もありました。しかし色々の面が考慮され、昨今は最も新しい基準がWHO(世界保健機構)より推奨される様になりました。
原則として余り年齢に拘らずこの様な基準をもって高血圧管理がなされております。すこしでも正常レベルを維持させる事が求められております。(脳血管障害、心臓疾患、腎臓の機能低下などの状態にある時はその人によって適正な血圧値が考えられますので、一律そうであると判断する訳には行きませんのでご注意下さい)。
【高血圧管理の目標について】
あくまでこの管理の目標は血圧上昇による合併症を起こさせない事であり、血圧を単に下げるのが目的ではありません。(異常に高い血圧、急激に上昇した高血圧他、緊急高血圧と言われる場合は降圧を目的とした治療が必須です)全身の太い動脈から細い動脈の動脈壁にかかる負担(血管傷害力と言えるもの)は血圧×(カケル)脈拍数が最大要素と考えられております。
脈拍数というのはそれ程多くなるものでなく、普通の生活している状態では脈拍数は1分間50〜100が一般的であり、100以上になることは過度の運動など特別の事がない限りめったにありません。従って知らずの内に起こっている血圧上昇(即ち高血圧症)がこの血管傷害力の主役を司っていると言う事になります。(血圧は一定している訳ではなく、瞬時に上昇もし、下降もするように常に変動していますが、平均血圧レベルが次第に上昇した状態が高血圧状態と言えます。)この血管傷害力をもろに受けるのが、心臓からすぐ出た胸部大動脈〜腹部大動脈〜大腿動脈であり、(胸部・腹部)大動脈瘤や大動脈硬化症或いは四肢主に下肢閉塞性動脈硬化症に至る素地となります。
他に血圧上昇の影響を受け易い動脈といえば、脳動脈、心臓をとり巻いている冠状動脈、腎臓(この臓器は動脈の固まりといっても過言ではありません)、眼内の奥に張りついている網膜動脈と考えられています。これらの動脈の傷害によって、動脈血血流障害が生じ、その臓器の働きが悪くなり、臓器障害へと進んで行く事になります。臓器障害の発症これがすなわち高血圧の合併症―脳血管障害、狭心症・心筋梗塞、腎機能障害 ⇒ 腎不全、網膜症による視力障害等々の疾患出現です。この合併症を如何に起させないか、これが高血圧症の管理目的なのです。(勿論この様な合併症は高血圧症のみでなく、高脂血症、糖尿病他、生活習慣病と相互関係あることは前回に述べた通りです。)
【家庭血圧について】
最近は簡単に自宅で血圧測定が出来るいわゆるデジタル血圧計が普及して来ました。色々の研究がされており、ある研究結果によりますと、家庭血圧による正常血圧は 125/80 mmHg未満で、135/85 mmHg 以上あれば高血圧と言えるであろうと論じられております。診察時、或いは健康診断時に測定された随時血圧値、一時点の血圧値のみで全体を把握出来るものでもなく、ごく一部の参考資料にしか過ぎません。規則的な血圧測定による血圧値の流れで初めて重要な資料となります。その他多くの点で次第に家庭血圧の重要性が認識されるようになってきました。しかし、問題点も少なくなく、十分な認識と注意が必要であることを忘れないで下さい。
又血圧値のみで治療効果を判断出来るものではない事も十分理解しておく必要があります。血圧を下げるのが目的ではないと前に述べました様に、それぞれ併せ持つ身体の状況が違い、程度も異なりますので、治療効果判定は様々です。更にいまだ高血圧と指摘されていない方々の場合、家庭血圧値を過信しない事も強調しておきたい事柄です。血圧による臓器障害の有無、程度により早期に治療を始める必要がある場合もあります。日頃から健診を受けるなどかかりつけ医との連携がここに大きな意味があります。皆様もご自分で家庭血圧測定を試みられては如何でしょうか。
【降圧剤について】
最近は多種の降圧剤が使われる様になっています。それぞれ血圧を下げる作用点が違ったり、効果発現・持続時間が異なったりと、その人に見合った降圧剤が処方されております。 高血圧発症時の年齢や起こり方の違い、臓器障害の有無と程度あるいは併せ持つ他の疾患との関係、1日の血圧変動パターン、ひいてはその人の生活環境等々を考慮し、一番適切と思われる降圧剤が工夫されて選ばれております。
又作用点の違いによって相乗効果と副作用発現抑制を狙って複数の降圧剤が使われる事もあります。従い、2剤から3剤飲んでいるから重症だとか、きつ過ぎはしないかとか、逆に1剤だからきつい薬ではないかとか色々憶測されて降圧剤に対して恐怖感や拒絶感をいだかれる方々が多く見られますが、上述しました様にその様な観点で処方されている訳ではありませんので安心して降圧剤の服用をして頂きたいと思います。 勿論副作用という嫌な要素があることは否めませんが、それなりの服用注意を守り、適宜副作用チェックを受けながら長い期間にわたって血圧コントロールをし続けることが健康維持の近道である事を再認識して戴きたいと思います。
◆おわりに◆
高血圧症について以上のことなどを理解して頂き、より身近に血圧コントロールの重要性を知っていただきたいとの趣旨で、ある程度問題を絞って述べました。是非参考にして生活習慣病を征服して下さい。