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生活習慣病としての循環器系疾患とは
健康アドバイス3
◆はじめに◆
昨今「生活習慣病」として、種々の疾患名が挙げられ、大いに注目されています。しかし、一つひとつを見ますと、どれをとっても自覚症状がなく、捉えどころが無い、しかし特に代表として癌、糖尿病等では、症状が現れた時点ではかなり進行した状態になっているのが正直なところであろうかと思います。
この自覚症状がないところに大きな落とし穴があり、ついつい毎日の生活において解っていても自制が出来ず、徐々に各々の生活習慣病が互いに関連し合って一つの大きな「病気」として発症に至ってしまいます。本人はそこで初めてこの生活習慣病の重要性を認識し、又その周囲の人達はこの人の事例を目の当たりにして生活習慣病の恐さを語り合うのでありますが、やはり日常生活に活かせるのは並大抵ではありません。何しろ自覚症状がありませんので、やはり此れまでの生活習慣を変える事は難しく、二の舞を踏まない様に、先を見据えて健康への生活を続ける方々は如何にみえるでしょうか。
本当に難しい事だと日常診療している医療サイドの我々が多く経験する事であります。この様な例の代表とされる心筋梗塞、脳血管障害、腎機能障害、四肢動脈閉塞性血管障害等々の循環器系疾患が全面に顕われ (いわゆる顕性化、あるいは発症)、その疾患そのものによる自覚症状での苦しみ、加えて生活活動の制約に悩まされる結果となります。だからこそこれら生活習慣病と言われる段階で、種々の異常病態をうまくコントロールしておく必要性がここにあるのだと改めて強調して置きます。
【生活習慣病が循環器系に及ぼす最大原因】
これまで生活習慣病の一部が取り上げられていますが、循環器系疾患に関連させて話を進めます。特に循環器系に及ぼす最大原因は「動脈硬化」というものです。体じゅうをくまなく血液(生命維持にとり大変重要な酸素と栄養、免疫成分等を運ぶ運搬としての役割を担っている血液)を循環させる為の動脈がありますが、この動脈の管の内面が粗造となり、壊れやすくなり、又血栓という塊が造られたりして血液の通りを悪くする(いわゆる循環障害を起こす)− これがすなわち動脈硬化という病態です − 結局はその障害部位より先の重要な細胞が栄養不足、酸素不足となって本来の働きを失ってしまう異常状態が生じる事になります。代表例が狭心症、心筋梗塞、脳血栓、脳梗塞等と言えるでしょう。
従い大事な事はこの動脈硬化を如何に進展させないかであり、これはとりもなおさず、動脈硬化の危険因子と言われる異常状態を改善し、抑制する事なのです。 動脈硬化の危険因子とされているのは、生活習慣病とされている「高血圧」、「高脂血症」、「糖尿病」、「痛風」(=高尿酸血症)、「肥満」、それに加え「喫煙」が挙げられています。
【40歳代のアメリカ人の参考例】
40歳代のアメリカ人の例ですが、動脈硬化発生倍率を示しているのが右の図です。3つの危険因子がありますと、無い状態と比べ実に27倍動脈硬化を有する事を意味します。
1) 血圧コントロールの必要性
高血圧がこの様に動脈硬化と大いに関係し合っているのがお分かりでしょう。単に血圧が高いから怖いのではなく(極端に高い血圧上昇は別ですが)、高い状態が続く事により、心臓に負担がかかると同時に動脈硬化を進展させる事が将来にもっと悲惨な疾患を招く原因になるから怖いのです。その人それぞれに見合った適正な血圧コントロールが絶対に必要な理由はここにあります。
2) 循環器系疾患との因果関係の深さ
高脂血症も大変重要な危険因子とされております。昨年日本動脈硬化学会が年齢、性、他の危険因子の持ち合わせと関連させて適正な総コレステロール・中性脂肪、悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)基準値を推奨しています。特に糖尿病、虚血性(血液循環不良)変化の有無を重要視しているのが特徴です。循環器系疾患との因果関係が深いからであり、この循環器系疾患の発生を予防する為に、この「高脂血症」を是正しておこうとの専門医の強い願いが込められての勧告です。
3) 動脈硬化を促進させる要因
糖尿病がありますと、高い血糖状態において、この余分な血糖そのものが血管の内面をぼろぼろにし血管を壊し動脈硬化を促進させるとされております。次ぎの図表(日医雑誌【村勢敏郎氏】投稿文より転載:心血管死亡率に及ぼす危険因子の影響)が示している通り、糖尿病でない人と比べて如何に死亡率が高くなっているか、これは即ち動脈硬化合併の多い事を意味しております。
心臓の血管のみに関係しているのではなく、同様に脳・腎臓・四肢の動脈、眼の網膜動脈も同じ事で、それぞれの障害として脳梗塞・血栓、腎機能障害⇒腎不全⇒腎透析(人工腎臓)、四肢動脈閉塞性壊疽、網膜症(視力低下、失明)と言った疾患を起こすことになります。
【肥満と動脈硬化との関係】
肥満と動脈硬化との関係はどうでしょうか。次ぎの図表が的確に危険因子であることを物語っていると思われます。動脈硬化の危険因子とされている糖尿病、高血圧、痛風の発症を起こす危険を高め、肥満と更にこれらの危険因子が加わりますと動脈硬化への進展は当然加速されることになります。とても無視する訳にはゆきません。
◆おわりに◆
この様に生活習慣病を因とした循環器系統疾患の発症がおわかりになった事と思います。動脈硬化が基因で促進され、結末として死亡率の高い疾病を引き起こす、非常に厄介であり、「老化」と同じくこの「動脈硬化」はまだまだ謎多いテーマでありますが、少しでも生活習慣病を正し、循環器系疾患の発症を予防、抑制して健やかな一生を過ごしたい・・・これが全ての人の願いなのであります。
循環器系疾患として上述した「高血圧症」、「狭心症・心筋梗塞」、「脳血管障害」、「四肢動脈閉塞症」について、やや細かなお話は次回にまわしたいと思います。