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健康アドバイス36
ロコモティブシンドローム(略してロコモ)は“運動器症候群”とも言います。運動器(骨、関節、筋肉などーこれをロコモティブオルガンとも言います)に障害が発生して日常生活に支障をきたす状態のことです。
もっと簡単に言うと“足腰が弱って寝たきり”になってしまうことです。
足腰を弱らせる原因は骨粗しょう症、脊椎圧迫骨折、大腿骨頚部骨折など下肢の骨折、膝や股関節など下肢の変形性関節症、脊椎や脊髄の疾患(腰部脊柱管狭窄症など)、神経・筋疾患(年を取ると筋力が弱る―サルコぺニアなど)が代表的疾患としてあります。
寝たきりになると健康寿命が短くなってしまいます。
寿命にもいろいろあって、一つは平均寿命(これはとにかく生きている期間)、もう一つは健康寿命(これは介護を受けず心身ともに自立して健康に生活することができる期間)です。
このところ医療の進歩や衛生状態や栄養状態がよくなり寿命が延びています。できれば健康で自由に生活することができる健康寿命を延ばすことが求められています。いくら長生きでも寝たきりでは幸せとは言えないでしょう。この不健康な状態を作ってしまう原因の一つがロコモティブシンドロームと言われています。
ロコモになると立って歩くことが困難になり移動能力が低下し、トイレに行けなくなる、衣服の着脱が困難になるなどの日常生活レベルが低下します。日常生活レベルの低下はメタボリックシンドロームや認知症を誘発する恐れもあり、寝たきり状態や介護が必要になるリスクが高まるのです。
こうした危険を防ぎ健康寿命を延ばすためにロコモティブシンドロームを理解し早期に対策をしていくことが重要と考えられるのです。
このロコモは自分で簡単にチェックすることが出来ます。
ロコモティブシンドローム‐7つのチェック項目
1)片足立ちで靴下が履けない
2)家のなかでつまずいたり滑ったりする
3)階段を上がるのに手すりが必要である
4)横断歩道を青信号で渡りきれない
5)15分くらい続けて歩けない
6)2kg程度(1リットルの牛乳パック2個程度)の買い物で持ち帰りが困難
7)家のやや重い仕事(掃除機の使用や布団の上げ下ろしなど)が困難
このチェックでは、1)はバランス感覚、 2)はつまずきに関わる下腿部の筋力や神経障害の有無、 3)は太ももの前の筋力や膝関節疾患の有無、 4)は歩行の速さ、 5)は筋力や筋持久力、心肺機能や脊柱管狭窄症の有無、6)と7)では身体全体の筋力のチェックです。
一つでも当てはまればロコモティブシンドロームの疑いありです。注意してください。
ロコモティブシンドロームになりやすいのは主に女性です。その原因とされているのが閉経による女性ホルモン量の減少によっておこる骨粗しょう症です。
閉経すると女性ホルモンの分泌が少なくなる為にカルシウムの吸収力が減少して骨粗しょう症になり骨が弱りやすいと言われています。骨が弱ると関節痛や骨折の原因になり、それらが体を動かすことが出来ない原因になるので間接的に筋力の低下を引き起こしロコモティブシンドロームの原因になります。骨粗しょう症を予防し骨折を防ぐには50歳−60歳ころには骨の量を測定し骨が少ない時は治療することが大切です。北欧では骨粗しょう症の治療をしっかりやることで高齢者の骨折が最近減りました。いっぽう日本では増えています。これは今後の課題です。
更に女性がロコモティブシンドロームを引き起こす原因としては、男性には男性ホルモンというホルモンが分泌されており、この男性ホルモンが筋肉を強化するという働きがあるので男性は比較的筋力の低下を起こしにくいのに対して、女性はこのホルモンが少ないために筋力低下を引き起こしやすいのです。また適度に運動したり日光浴を行うという生活習慣がないと筋肉や骨の弱体化を招きます。毎日体を動かさない方や、日光に毎日全く当たらない生活をしている方はロコモティブシンドロームになりやすいと言えます。よってしっかり体を動かし、毎日適度に日光に当たればそのリスクを抑えられると考えられます。松阪市近辺は夏の日光がきついので少し注意が必要ですが。
運動器の機能が低下することで、つまずきやすくなります。高齢者の転倒は、骨粗鬆症などの影響もあり、骨折を伴うことが多く危険です。手をついたときの手首の骨折や、しりもちをついた際の腰椎の圧迫骨折などが多くみられますが、特に大腿骨頚部の骨折には注意しなければなりません。大腿骨頚部は太ももの付け根部分で、体を動かすのに重要な部位です。ここを骨折すると手術が必要なことが多く治療に時間がかかります。
骨折をすると患部周辺の筋肉が衰えて細くなり、筋力が低下します。また動かすことが出来ないため関節可動域が低下します。大腿骨頚部骨折の場合こうした機能低下が全身に起こります。
早期に骨折を直す手術をしてリハビリをしても骨折前の状態まで回復する事は困難なことが多いです。
身体を動かさなかったことで、運動器が急速に衰え寝たきり状態になり、認知症になってしまう場合があるのです。よって高齢者は大腿骨頚部骨折によりたくさんの合併症がでて寿命が縮みます。
ロコモティブシンドロームの予防・改善に重要なのが下肢の筋力とバランス能力です。歩く習慣をつけることで筋力低下や移動能力の低下を防ぐことができますし、歩いたりする以外でも様々なスポーツを行うことは効果的とされています。また肥満体型であれば減量をするように心がけましょう。脂肪の重さは皆さんの想像以上に関節や骨などに大きな負担をかけています。
年齢を重ねると運動の効果は出ないと思われがちですが、何歳になっても効果はきちんと現れます。人間の筋力は20歳代〜30歳代がピークになり、それから徐々に衰えるとされていますので40歳代前半から積極的に筋力トレーニングをした方がいいと言われています。特に女性の場合は早い人で40歳代から女性ホルモンの量が減少して、それに伴い骨量も減少するので、運動を行って骨に刺激を送り骨粗しょう症を防止し、筋力も鍛え筋力低下を予防していくことが推奨されています。
■ロコモティブシンドローム予防の体操(図1)
・片足立ち−左右1分間ずつ1日3回しましょう。
(転倒予防のため、何かにつかまって行ってください)
・スクワット−深呼吸するペースで5〜6回繰り返します。
1日3セットします。
(足は肩幅より少し広い目、
つま先は30度外へ開き、膝がつま先より前へ出ないよ
うお尻を引いて膝を曲げます。転倒予防のため、何か
につかまって行いましょう)
・余裕があればカーフレイズ−両足でまっすぐ立ってか
かとをゆっくりあげてゆっくり下ろします。(10−20回繰り返し、1日2−3セット行いましょう。
転倒予防のため、何かにつかまって行いましょう。)
怪我せぬよう余裕をもってやってください。
高齢化が進む日本で心配な病気や疾患は何かというアンケートに対して「がん」「認知症」「心疾患」「脳血管障害」などの回答が多く上位をしめています。近年急速に広がっているメタボリックシンドロームという言葉は、まさにこうした心疾患や脳血管障害などの内臓系の疾患による死亡リスクが高い状態のことを言います。メタボリックシンドローム(略してメタボ)とロコモティブシンドロームが合併して発症するとは限りません。しかし身体は連動して健康を保っていますので、どちらかが悪くなれば当然もう一方のリスクも高くなるといえます。どちらにも悪影響を与えるとわかっているのが「肥満」です。肥満体型では内臓脂肪が多く、高血圧・高脂血症がありメタボリックシンドロームに当てはまり、心疾患や脳血管障害の危険が高くなります。これらの疾患も寝たきりの原因となります。また肥満体型の場合には体重が重くそれだけ運動器にかかる負担も増大し下肢の関節の変形などの症状が悪化しやすくなりロコモティブシンドロームを重症化させる恐れがあるのです。こうして「メタボ」と「ロコモ」が協力し寝たきりとなります。適度な体重を保つことが大切です。
日本は世界で一番長寿だといわれていますが、多くの方は運動器の低下によって歩行が出来なくなり寝たきりなどの状態になり、介護が必要になるという現実があります。最後まできちんと自分の足を使って歩き、介護を必要としない体になる為には40歳代からしっかり筋力を鍛え、その能力を維持していくことが、高齢になってからの健康な状態を維持することに繋がるのです。特に松阪市近辺では車の利用が増え(地方ではどこでもそうですが)便利になりましたが、歩いて移動するなど体を動かす機会が減り筋力低下に拍車をかけているような気がします。自分から積極的にトレーニングを行う必要があるのです。歩きましょう、今日から!
サルコぺニアとは筋肉の量が減少し筋力が低下していく老化現象のことです。筋肉量の減少は25〜30歳頃から徐々に進行が始まり、生涯を通して進行していきます。筋肉の数と太さがともに減少することが原因と考えられていますが、そのメカニズムはまだ判明しておりません。
サルコペニアは、広背筋(こうはいきん)、腹筋(ふっきん)、膝伸筋群(しつしんきんぐん)、臀筋群(でんきんぐん)などの抗重力筋において多く見られるため、立ち上がりや歩行がだんだんとおっくうになり放置すると歩行が困難になり高齢者の活動能力の低下の大きな原因となっています。ただし高齢であってもトレーニングによって進行の程度を抑えることが可能です。そのためには適度な筋力トレーニングを行うことが大切です。
頻繁につまずいたり、立ち上がるときに手をつくようになるとこの症状がかなり進んでいると考えられ、積極的にトレーニングを行うことが大切でその後の生活の質的な安定に大いに役立ちます。特につまずきやすさは当人や周囲が注意力不足のせいだと思い込んでいることが多く、実は筋力の低下が原因と気付かず注意が必要です。
おいしいものをバランスよく食べて元気に長生き!そのためには適度に運動、そして肥満と骨粗しょう症に注意!
グッドバイ 「ロコモ」と「メタボ」!