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健康アドバイス22
「胸が痛い」と感じた時に、皆さんは何を連想しますか?
胸が痛いと症状を訴え、病院を受診した有名人は、石原裕次郎・加藤茶・淀川長治・石立鉄男(動脈瘤の人)、津川雅彦・和田アキコ・やしきたかじん(気胸の人)、徳光和夫(心筋梗塞の人)など、なかには命を失った人や九死に一生を得て復帰した人など、単に胸が痛いといっても命に係わるものから放置してよいものまでイロイロあります。
今回は代表的な病気と放置してはいけない症状、それを見つけるポイント、医師に診てもらう時に皆さんから医師に伝えるべき情報の整理について考えてみたいと思います。
胸の痛い病気 |
病気の重症度合と、胸痛の強さ・頻度は必ずしも一致しない事が重要なポイントです。心筋梗塞は確かに強い痛みを伴うことは多いのですが、お年寄りや糖尿病の人では胸痛ではなく不快感がある程度だったり、他の症状(腰が痛い等)にまぎれることもあります。逆に命に係わらない心臓神経症などでは頻繁に胸が苦しかったり、肋間神経痛では耐えがたい激痛に見舞われることもあります。 |
非常に大まかな分類ですが、胸が痛い時の病気は
(1)すぐに命にかかわる危険なもの (a)急性心筋梗塞 (d)肺梗塞 |
(2)すぐには命の危険がないと思うもの(消化器、筋肉、神経に由来するものが多い) (a)食道炎 (d)肋間神経痛(帯状疱疹) などに分けられると思います。
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これらの、どれに当てはまるかを皆さんが判断することは不可能です。
最近はメタボリックシンドロームなど、生活習慣の不摂生からくる生活習慣病が増加しており、「若いから問題ない」というわけではありません。「変な病気だと怖いから受診しない」と言わずに、まずかかりつけの先生にご相談ください。あなたの将来・命がかかっている病気かもしれないのですから。
病気の起こり方 |
では、実際にはどのような症状になるのでしょうか。架空の患者さんに登場して頂きます。
Aさん45歳男性
最近、職場を変わり新しい環境でまだ慣れていない状態。コレステロール値が高く、高血圧・肥満があり、以前の会社で病院にいくように言われていたが放置していた。朝早くから、会社で慣れない上司と激論を交わす会議中、胸に焼け火箸を指し込まれたような激痛と背中の激痛を感じ、意識を失う。救急車にて集中治療室に入院。緊急手術となる。
⇒【解離性大動脈瘤】(かいりせいだいどうみゃくりゅう)(心臓からスグの太い動脈の壁が、生木を裂くように押し広がる病気。致死率が高い)
Bさん20歳男性
身長180cm、やせ形のイケメン。昨晩、友達と飲みに行って大騒ぎ。家に帰って少し息苦しいがお酒のせいと思い就寝。夜明けになって胸が痛くなり、さらに息苦しくなり、朝までがまんして近所の診療所を受診。レントゲン写真を撮られ総合病院を紹介される。病院で入院治療。
⇒【自然気胸】(しぜんききょう)(肺が破れて吸った息が肺の外に漏れる病気。やせ形の若い男子に多い)
C子さん39歳女性
最近、仕事と子育てで疲れ気味。風邪をひいていたが、家事は待った無しで、薬局で薬を買って、何とかしのいで無理をしていた。昨日の夜から、右の乳房の横がヒリヒリして痛かったが筋肉痛と思い放置。朝になって、呼吸はできるが体の置き所のないような激痛があり、胸を見ると赤い湿疹ができていたため、近所の皮膚科を受診。お薬を貰い外来診療。
⇒【帯状疱疹】(たいじょうほうしん)(体のなかに潜んでいた、水ぼうそうのウイルスが原因。肋間神経痛のような後遺症を残すことあり)
Dさん58歳男性
メタボリックシンドロームを特定健診にて指摘されたヘビースモーカー。近所の医院にて高血圧の薬、コレステロールを下げる薬を貰っていた。薬は時々飲むのを忘れること有り。最近は医院の医師に糖尿の気があるので検査を予定されていた。ある夏の暑い日、深夜まで飲酒の翌日、ゴルフのプレー中に心臓が爆発したような激しい胸痛がおこり救急車を呼ぶ。集中治療室に入院。
⇒【心筋梗塞】(しんきんこうそく)(動脈硬化により、心臓を栄養している冠動脈の一部の血液の流れが途絶えてしまい、心臓の筋肉細胞が死滅する病気。致死率が高い)
というように、胸が痛いといってもいろいろな発現の仕方があります。
AさんやDさんのように、後がどうなったのか心配になる病気や、BさんやCさんのように「えらい目にあったね」と、あとで笑って言えそうなものまでいろいろです。しかし、Bさんは朝まで我慢していたら、ひょっとしたら、命取りになっていたかもしれない危険をはらんでいるのです。ふつうの自然気胸であれば、すぐに命にかかわることはありませんが、緊張性気胸といって、漏れた空気がたまって肺を押しつぶしてしまい、放置すると心臓が止まってしまうコワイ気胸だったかもしれないのです。
では、どんな時に、注意しなければいけないのでしょうか?
こんな症状があったら注意して |
●締め付けるような痛み
(前)胸部絞扼感(きょうぶこうやくかん)とも云います。「胸の真ん中あたりが不快な感じ」「恋人に恋焦がれるような感じ」「胸の痛みと一緒に、下あごや腕、肩にだるいような不快感」などと表現さ れることがあります。30分以内、多くの場合は数分間持続して改善します。原因としては狭心症、心筋梗塞のような虚血性心疾患(心臓の筋肉への血流が不足して生じる病気)が考えられます。
●激しい痛み
冷や汗を伴うような激しい痛みです。原因としては心筋梗塞や急性大動脈解離など致死率の高い重篤な病気が考えられます。
●針で刺すような痛み ●呼吸やセキと共に痛くなる |
どんな時が緊急事態か |
最近、街では救急車の図柄で、「本当に救急車は必要ですか?」と書かれたポスターを見かけます。
今日の救急体制の危機は、深刻な状況です。「こんなくらいで救急車や休日・夜間応急診療所などに連絡してよいものか?」、お迷いになることも多いと思います。実際、「これくらいで病院に来なくても」と思う方も少なからずみえます。しかし、このような時の胸痛症状の見切り方が大問題です。
以下のような状態は、命に危機が迫っていると考えて良いと思います。
(1)がまんできない程の激しい痛み
(2)「このままでは死んでしまうのでないか」と恐怖感を伴う痛み
(3)今まで経験したことのない長時間続く痛み・・・短くても15分以上
(4)胸やみぞおちのあたりに冷や汗を伴う痛み
(5)吐き気を伴う強い痛み
(6)セキがでて、呼吸がどんどん苦しくなる症状を伴う痛み
これらの症状のある時は、緊急事態です。
ただちに病院に向かって下さい。迷わずに、救急車を要請しても、決して恥ずかしいことではないし、むしろ、救急車を呼ぶべきだと思います。なぜかと言うと、治療の開始が遅れると命にかかわります。治療の開始が早ければ早いほど、回復の可能性が高くなるからです。
胸が痛いとき病院で医師に症状を伝えるポイント |
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最後に |
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胸が痛いという症状で、考えられる病気とその対応を考えてみました。 最後に、架空の患者さんたちはその後どうされているでしょうか?
めでたし、めでたし。 |
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