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健康アドバイス11
6年連続で年間3万人以上の自殺者が報告され、その原因のひとつとしてうつ病が関与していることが知られており、社会全体としてうつ病への関心がたかまりつつあります。また医療機関への受診や保健所への相談も増加傾向にあります。
一日中毎日のように、気分のおちこみや意欲の低下した状態が続く、心の病気です。脳におけるセロトニン、ノルアドレナリン(=神経伝達物質)の働きが低下することが原因とされています。仕事や人間関係、経済的問題などのストレスがきっかけになって起こることが多いのですが、まったくきっかけがなく起こる場合もあります。
15人に1人の割合で一生に1回以上うつ病を経験するといわれていますが、40〜50歳代の中年層が多く、女性のほうが男性の2倍なりやすいです。性格的に真面目、仕事熱心、几帳面、他者の評価を気にするタイプに多いといわれますが誰にでも起こりうる可能性があります。
以下の症状が一日中ほぼ毎日、2週間以上続きます。
(1) |
気分のおちこみ・・・ |
気分が沈んでゆううつになる。 |
(2) |
意欲の低下・・・・・ |
盆栽の水遣りを全くしなくなったり、釣りを趣味とし熱中していた人がまったく釣りを楽しめなくなったりする。 |
(3) |
食欲が低下し体重が減少する、または食欲が著しく亢進する。 |
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(4) |
眠れない、または眠りすぎる。 |
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(5) |
いらいらして落ち着きがない、または逆に動きが極端にのろくなった。 |
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(6) |
非常につかれやすい。 |
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(7) |
むなしい、自分は無能だという強い考えになる。 |
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(8) |
集中することや決断することが困難になる。 |
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(9) |
「死」について何度も考える、あるいは実行しようと計画する。 |
上記のうち、(1)または(2)を含んで5項目以上あてはまる人は、うつ病である危険性が高いです。ぜひ一度医師に相談してください。
単なる気分の落ち込みでは、仕事で失敗したり、失恋した時に気分が落ち込んだり眠れなくなることはありますが、通常は数日で自然に治ることがほとんどです。しかし、それらの症状が2週間以上続き、日常生活に支障を来たす場合は、うつ病の可能性があります。うつ病になると、周囲から見ると「怠けている」「気にし過ぎ」と言われることがあるかもしれません。しかし脳内での<神経伝達物質>の働きが低下してうつ症状が現れているので、治療の助けを借りなければ回復が難しい状態と言えます。
(1) |
薬物療法:脳内のセロトニンやノルアドレナリンの働きを高め、うつ気分や意欲の低下といったうつ症状を改善させる効果を持った「抗うつ剤」が主体です。近年、SSRIやSNRIといった副作用の少ない抗うつ剤が治療で使われることが多くなりました。ただ、抗うつ剤は即効性がなく飲み始めてから効果が出てくるまで2週間ほどかかります。抗不安薬(精神安定剤)や睡眠薬などを併用する場合もあります。 |
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(2) |
精神療法:悩みの相談を聞き、ストレス対処法についてのアドバイスを行ないます。場合によっては、うつ状態を引き起こす背景にある物事の受け止めかたや考えのゆがみを変えて行動面に反映させていきます。 |
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(3) |
休養:心と体を休め、無理をしないということがうつ病の治療において非常に大切です。うつが重症の場合は休職や休学が必要です。 |
これらの副作用はくすりの飲み始めや量が増えた時に起こりやすいのですが、体がくすりに慣れることによってしだいに気にならなくなることが多いです。前立腺肥大や緑内障で治療中の方は、抗うつ剤の種類によっては症状が悪化する可能性がありますので必ず医師に伝えてください。わからない点があれば主治医に相談してみましょう。
うつ病の診療は、病院または個人のクリニックの精神科・神経科・心療内科で行なっています。まずはかかりつけの先生に相談してください。
うつ病が治るまでには、症状の一進一退がありますし、時間がかかります。しかし、あせりは禁物です。主治医の指示にしたがってキチンと治療を続けてください。
Q1: |
妊娠中でもくすりを飲んでいて大丈夫? |
A1: |
受診時にかならず医師に妊娠中であることを伝えてください。妊娠初期(妊娠3ヶ月ころまで)は胎児への影響を考えてくすりを飲まずに治療することが多いようです。その後、経過をみながら必要最低限量で服薬を再開していきます。出産をあきらめなければならないわけではありません。また、授乳中の場合もかならず医師に伝えてください。 |
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Q2: |
うつ病で治療を受けているが物忘れがひどい。 |
A2: |
うつ病の症状として、考えたり集中したりするはたらきが低下するため、物事を覚えにくくなったり思い出しづらくなることがあります。ただ、認知症(痴呆症)の物忘れとは違い、うつ病そのものが改善すれば、回復が望めます。くすりの副作用で物忘れのような症状がでることもあります。診察のときに医師に相談してください。 |
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Q3: |
家族がうつ病になってしまいました。積極的に話しかけたほうが良いですか、それとも、そっとしておいた方が良いのでしょうか |
A3: |
うつになると、あまり話したがらなくなることが多いです。それはエネルギーが低下した状態のため、話す気力が低下しているのです。何気ない話しかけをして、あまり気が乗らない様子ならそっとしておき、本人が話しかけてきたら、その意見をなるべく否定せずに耳を傾けることを心がけてください。見守る姿勢が大切です。 |