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健康アドバイス47
臓器別がん罹患数の最新(2012年)のデータでは、大腸がんになった人の数は、男性7万7365人で2位、女性5万7210人で2位、男女あわせるとがんのなかで大腸がんの患者さんが一番多いことになります。
臓器別がん死亡者数をみても2015年に大腸がんで亡くなられた患者さんの数は、女性2万2881人で1位、男性2万6818人で3位、男女合計で4万9699人が亡くなられています。
がんの予防策としては次のようなことがあげられます。他のがんにも共通する部分が多いのですが、少しの心がけでがんにかかりにくい体づくりは可能です。
・肉類など動物性脂肪をとりすぎないようにしましょう。
・食物繊維が多い野菜中心の食事を心がけましょう。
・肥満にならないように適度な運動は大腸がんの予防になります。
・多量の飲酒や喫煙は大腸がんの原因になります。
・ストレスをためないようにしましょう。
早期の段階では症状はほとんどありませんが、以下のような症状があらわれた場合は大腸がんを疑って医療機関で検査を受けましょう。
・便に血や粘液が混じったり下血したりする(痔と自己判断しないこと) | |
・下痢と便秘を繰り返す(便通異常) | ・残便感がある |
・腹部に膨満感がある | ・腹痛がある |
・肛門痛がある | ・腹部にしこりがある |
・腹鳴(おなかがなること)がある | ・便が細くなった |
・貧血がつづく | ・治りにくい痔がある |
次のような人も検診を受けることをお勧めします。
・10年以上潰瘍性大腸炎にかかっている。
・家族の中に大腸がんにかかった人がいる。
・大腸ポリープが見つかったことがある。
早期発見のために欠かせないのが検診です。大腸がんは初期には症状がありません。少しでも症状がある場合にはすでに進行がんになっていることがほとんどです。しかし大腸がんは検診(便潜
血反応)によって早期発見が可能です。
自宅で便を採取し便に血がまじっているかどうかを調べます。簡単で苦痛を伴うことがありません(下図)。
大腸がん検診で陽性(血がまじっている)と判定された場合は、より詳しく調べる精密検査を受けます。精密検査は基本的に大腸内視鏡検査(左図)です。
大腸がん検診で陽性と判定された方の約3%にがんが発見されています。また30-40%にポリープが見つかっています。大腸ポリープはその一部にがんが潜んでいたり、将来がんにかわる可能性があります。大腸ポリープを内視鏡で切除することで、がんの芽を 摘んだり、将来がんになるリスクを減らすことができます。(下図)
大腸がん検診で早期発見できれば次のようなメリットがあります。
1. | 手術が簡単にすみます。お腹をきることなく内視鏡や腹腔鏡で治療することができれば、 体への負担が軽くすみます。 |
2. | 治療に要する費用や時間の負担が少なくてすみます。 |
3. | 治療後に日常生活への影響が少なくてすみます。 |
4. | 家族への負担が少なくてすみます。 |
また、検診を受けて大腸がんでないことが確かめられれば安心感を得ることができます。国全体として大腸がんによる死亡を減らし、ひいては増え続ける医療費の削減にもつながります。
大腸がんの早期のがんは大腸内視鏡で切除が可能です。徐々に大きくなり進行がんになると手術が必要となります。ほとんどの場合には腹腔鏡手術といって大きくお腹を切開せずにがんを取り除くことができます(下図)。
しかし、がんが大きくなって大腸が閉塞(へいそく)してしまったり、周囲の内臓にとりついてしまうと腹腔鏡手術が困難となり、おなかを大きく切開しないとがんを取り除くことができなくなります。また、がんはほかの内臓に転移します。転移してしまった場合には多くの場合、手術で完全に取り除くことができなくなり、抗がん剤の治療がおこなわれます。この場合の平均生存期間は約3年です。
【50歳代 男性 ○○さんの場合】
半年前に大腸がん検診を受けて陽性と言われていましたが、仕事が忙しく精密検査は受けていませんでした。半年後、間欠的に下腹が痛むようになり、しだいに便が出にくくなって、細い便や血が混じった便が出るようになっていました。腹痛がひどくなって近くの医院を受診しました。検査の結果、大腸がんで大腸がほとんど閉塞していることがわかり、病院に紹介され即日入院となりました。おしりから大腸に管を留置され、大腸内にたまった便を洗い流す処置を2週間受けたあと開腹手術を受け、がんは無事とり除かれ3週間後退院となりました。現在、がんの再発を予防するために抗がん剤を内服しています。
働き盛りの一家の大黒柱の男性が、進行した大腸がんになってしまったケースです。もし、半年前に精密検査を受けていたらどうなっていたでしょう?
大腸が閉塞する前に診断され、腹腔鏡手術で治療できたでしょう。小さい傷ですみ、術後の痛みも少なく、もっと短い入院期間で退院できたでしょう。再発する危険もなくなり、手術後に抗がん剤治療を受けなくてすんだ可能性があります。治療にかかる費用も少なくてすんだはずです。松阪地域ではこのような事例がいまだに多いのが現状です。検診受診率が低いことがその大きな要因と考えられます。
40歳をすぎたら大腸がん検診をぜひ受けてください。症状がないからどこも悪くないと考えるのではなく、がんが隠れているかもしれないという意識をもって検診を受けることが大切です。