ホーム > 健康アドバイス70
健康アドバイス70
みなさん一生に一度で良いのです、ヘリコバクター・ピロリ(以後ピロリ)菌のチェックを受けてください。
世界で初めて2013年にピロリ菌による萎縮(いしゅく)(老化)性胃炎の除菌療法が保険適用になって10年経ちましたが、依然「除菌すれば100% 胃がんが予防出来る」「除菌したら以後、胃カメラを受けなくても良い」といった誤った認識をされる方も多くみえます。
ピロリ菌は、ほぼ0〜4歳までしか感染しないことが分かっています。一般に成人になってからピロリ菌に感染した方は、ほぼ自然に治っていきます。
しかし、赤ん坊は、胃酸を分泌する力が弱く、免疫システムも確立されていないため感染し、持続するのです。感染は経口感染です。昔は衛生環境が整っていなかった(井戸水、汲 み取り便所、食品の管理)ことによるものが多く、衛生環境が改善した現在では感染者は減少しています。
ただ、そのなかでも、現在の日本では濃厚接触による身内(母>>父)からの感染が多いとされています。したがって、自分がピロリ菌を除菌した人で子どもがいる方は必ず子どもにピロリ菌のチェックと胃カメラを受けさせてください。場合によっては代々、胃がんのリスクを引き継ぐことになります。
また、ピロリ菌感染は保険適用になった疾患以外にも、実は認知症、蕁麻疹(じんましん)、糖尿病、貧血、動脈硬化などの病気に関係しているといわれています。
ピロリ菌に感染していると胃がんにかかるリスクが非常に高く、実に胃がん患者の99%がピロリ菌の感染者であると判明しています。
以前、胃がんは、日本人のがん死因のダントツの1位でした。ピロリ菌除菌療法が始まるまで、年間毎年5万人も亡くなっていましたが、除菌治療(安易で自費で行っても1万円でお釣りが来る)により、図2のように、ここ10年で劇的に胃がん罹患率、死亡率が低下してきています。
ピロリ菌感染の自然経過を図3に示します。
幼少期にピロリ菌に感染し、慢性の活動性胃炎を来たします。
症状が強くでる人は、10〜20代に十二指腸潰瘍、20〜40代に胃潰瘍を来たし、50歳以降になり加齢+喫煙、塩分摂取過剰により萎縮性胃炎から胃がんになるという経過が一般的です。稀に若い女性でピロリ菌が原因で予後の悪い胃がんになる方がみられます。
ただ、いろいろな研究から、ピロリ菌に感染していても30歳までに除菌をすれば、以後、胃がんにほぼ罹(かか)らないといわれています。したがって除菌をするなら可能な限り若い方が良いのです。
松阪市では、胃がんを発生させない目的で、松阪市に住所を有する中学3年生を対象にピロリ菌検査を実施しています。
治療は、ピロリ菌の除菌薬3種類の薬(2倍量の胃潰瘍の薬と2種類の抗生剤)を7日間内服するだけです。その後、3ヶ月してから除菌が成功したか判定します。必ず除菌が成功したか調べて下さい。未だに除菌したことに安心してしまい除菌判定を受けない人が見受けられます。
ピロリ菌の除菌に成功しても、毎年500人に1人 胃がんが発症します。
胃がんの発症は、ピロリ菌の除菌後3年で約半数みられますが、10年を過ぎても認められており、除菌後に経過を見ることが大事です。経過には必ず胃カメラ(早期でがんを見つけるために)を受けて下さい。
除菌後3年間は必ず毎年、胃カメラを受けていただき、除菌した時点での胃炎の程度(主治医に聞いて下さい)により頻度(毎年か隔年か)を変えていくのが現時点では最善です。
・胃がんはヘリコバクター・ピロリ菌の除菌で予防できる
・30歳になるまでに除菌すると胃がんの予防効果は、ほぼ100%
・検査で陽性なら胃透視でなく胃カメラを
・除菌したらピロリ菌の判定を
・除菌に成功しても年に一度は胃カメラを
・自分がピロリ菌陽性なら子どものチェックを