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健康アドバイス64
日本人の死因の約5割は、生活習慣病です。生活習慣病とは、食事、運動、喫煙、飲酒などの生活習慣がその発症や進行に関係する病気のことで、がん(悪性新生物)、心疾患(狭心症、心筋梗塞などの心臓病)、脳血管疾患(脳梗塞やクモ膜下出血などの脳の病気)などの病気が含まれます(図1)。特に、悪性新生物と心疾患は年々増えてきています(図2)。
これらの病気が怖いのは、初期には自覚症状がないことが多く、気がついた時には病気が進行してしまっている可能性がある事です。逆に、早期に発見し治療することができれば、予後は大幅に改善されます。そのため、定期的に健診を受けて自分の健康状態を把握し、問題があるようでしたら生活習慣の改善や医療機関への受診につなげることが大切になってきます。
現在、日本における死亡原因のトップはがんです。2020年にがんにより亡くなられた方は約38万人で、40代以降に徐々に増加してきます(図3)。多くのがんの発生には、食生活や飲酒、喫煙(受動も)、睡眠といった普段の生活スタイルが大きく影響すると言われており、これらを改善することによりリスクを大幅に低下させることが出来ますが、完全に発症を抑えることはできません。
そこで大事になってくるのが、症状のない時期に発見し、治療につなげるということです。
早期発見できればそれだけ完治する可能性が高くなりますし、治療にかかる費用や時間の負担も軽くなります。そのためには定期的にがん検診を受け、必要であれば精密検査を行うことが重要になってきます。
特に死亡数の多い、肺がん・大腸がん・胃がん、女性では乳がん、子宮がんの検診が重要です(図4)。
下の表は令和5年度の松阪市がん検診ですが、死亡率の高いがんの検診を受けることができます。
肺がん | 40歳以上 | 胸部レントゲン撮影 胸部レントゲン撮影+喀痰検査(問診の結果などで必要な方のみ実施) |
胃がん | 40歳以上 | 胃部X線(バリウム) 胃内視鏡(カメラ) |
大腸がん | 40歳以上 | 便潜血検査 |
子宮頸がん | 20歳以上(女性) | 内診、頸部細胞診 |
乳がん | 40歳以上 | マンモグラフィ(個別健診は希望者に医師による視触診を実施) |
20歳〜39歳で昨年度エコー検診を受診していない女性 40歳以上で昨年度マンモグラフィ検診を受診した女性 |
超音波(エコー) | |
前立腺がん | 50〜68歳の男性 | 血液検査(PSA) |
がん検診では、結果が「要精検」か「精検不要」で報告されます。「要精検」は、がんの疑いがあるということなので、放置せず必ず精密検査を受けてください。
尚、多気郡3町においても同じようながん検診を受けることができますので、詳しくは各町広報誌やホームページでご確認ください。
また、がん検診は無症状の時期の発見が目的ですので、何らかの症状がある方はお近くの医療機関で相談し、診断のための適切な検査を受けるようにしてください。
がんに次いで多い死因である心疾患や脳血管疾患は、動脈硬化が原因となる病気です。動脈硬化を起こしやすくする要因としては、高血圧・喫煙・糖尿病・脂質異常症(高脂血症)・肥満などがあります。特に、肥満のうちお腹の内臓に脂肪が蓄積した「内臓脂肪型肥満」の方は、内臓脂肪から多くの悪玉物質が分泌され、高血圧、高血糖、脂質異常などが生じやすくなっています。これらの要因は単独でも動脈硬化を進行させますが、複数が重複すると、病気と診断されない軽度の異常であっても動脈硬化が進行し、心疾患や脳血管疾患を発症する危険が高まることが分かっています。
また、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病は、初期には特に自覚症状がないことが多く、いつの間にか病気が進行してしまっていることがあります。
そこで、特定健診・特定保健指導では生活習慣病予防の早期発見と予防のために、対象者(40歳〜74歳)の方にメタボリックシンドロームに着目した健診と保健指導が行われます。
ちなみに、内臓脂肪型肥満(ウエスト周囲径で判定します)に加え血圧、血糖、血清脂質のうち1つが基準値から外れている方が「メタボリックシンドローム予備軍」、2つ以上が外れている方が「メタボリックシンドローム該当者」と判断されます。単に腹囲が大きいだけではメタボリックシンドロームではありません。
必須項目 | (内臓脂肪蓄積)ウエスト周囲径 内臓脂肪面積 男女ともに≧100cm2に相当 |
男性≧85cm 女性≧90cm |
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選択項目 3項目のうち2項目以上 |
1 | 高トリグリセライド血症 かつ/または 低HDLコレステロール血症 |
≧150mg /dL <40mg /dL |
2 | 収縮期(最大)血圧 かつ/または 拡張期(最小)血圧 |
≧130mg /dL ≧85mg /dL |
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3 | 空腹時高血糖 | ≧110mg /dL |
特定健診ではまず、服薬歴や喫煙歴、食事や運動をはじめとする生活習慣に関する標準的な質問票による問診が行われます。また内臓脂肪の蓄積があるか判断するために腹囲測定を行い、さらに、メタボリックシンドロームに該当するかどうかを判定するために、血圧測定、血液検査(血糖、中性脂肪、HDLコレステロールなど)が行われます。メタボリックシンドロームがわかるだけではなく、肥満を伴わない、高血圧、糖尿病、脂質異常症や、腎臓、肝臓の検査項目も含まれています
身体測定・血圧測定・尿検査(尿糖、尿蛋白、尿潜血) | |
血液検査 | 肝機能(GOT、GPT、γ-GTP、アルブミン) 血中脂質(中性脂肪、HDL、LDL) 糖代謝(血糖、HbA1c) 腎機能(尿酸、クレアチニン、BUN) |
心電図、貧血検査(ヘマトクリット値、血色素量、赤血球) | |
眼底検査 | ※眼底検査は一定の基準のもと、医師が必要と認めた場合に実施。個別健診のみ。 |
特定健診の結果、生活習慣病の発症リスクが高いと判断された方に対し、生活習慣を見直すために特定保健指導が行われます。リスクに応じて「動機づけ支援」または「積極的支援」が行われます。
「動機付け支援」では、原則1回のみ医師、保健師、管理栄養士などが面接を行い、生活習慣の課題を把握するための支援を行い、改善のための目標・計画を策定します。
「積極的支援」では、上記と同様の支援を行った後も、6ヵ月の間に面接・通信などの手段を用いて、定期的な支援が行われます。
良くない生活習慣は自分で気が付いていなかったり、気が付いていてもどうしたら改善できるかわからなかったりすることが往々にしてあります。特定保健指導は生活習慣を見直すきっかけになりますし、適切なアドバイスを受けることにより改善の効果が上がることも期待できます。対象者の方は是非特定保健指導を受け、生活習慣の改善に役立ててください。
我が国の平均寿命は2019(令和元)年において、男性81.41歳、女性87.45歳世界有数の長寿国です。一方、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を意味する健康寿命は、男性72.68歳、女性75.38歳と、平均寿命に比べてそれぞれ約9年、約12年短くなっています。
健康寿命を延ばすためには、生活習慣病の発症や重症化を予防し、健康を維持することが大切です。そのためにも定期的に健康診断を受け、必要であれば生活習慣の改善を行い、治療すべき病気は早期に治療を開始するようにしていただきたいと思います。