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健康アドバイス32
前回に引き続き、家庭で出来る応急処置についてまとめてみました。
今回は、出血に関する応急処置についてです。
出血と言っても、出血の原因や、出血している場所、さらにその血管が動脈なのか静脈なのか、などによっても対応がまるで異なります。
口からの出血であったとしても、それが気管からであったり、食道や胃からかもしれませんし、鼻腔からである事も考えられ、処置法も全く違います。出血の原因、病歴、服用薬剤など、出血の状況を判定する材料を、常に身近に準備しておかなければ、まさかの事態の時にとても困ることがあります。治療の開始の時機を失えば、それだけ手遅れになってしまう事も、十分に考えておかねばなりません。
普段経験が無いと、血を見ただけで動揺してパニックになってしまうかもしれません。その様な時に適切な行動がとれるように、日頃から心の準備と身の回りの整理が大切なことをしっかりと心に刻んで、“明日は我が身です”、まずは落ち着いて対応してください。
脈拍に合わせて「ピュッ、ピュッ」と噴き出すように出血するときは、動脈出血である可能性が強いので、短時間に多量の血液を失う場合が有ります。また血液の色も、鮮やかな赤い色をしていて、少し赤黒い静脈血とは明らかに違いますし、出血の勢いがかなり強いことからも推測できます。その時には、出血部の心臓に近い部分を強く圧迫して止血をし、包帯などをきつく巻きつけます。間違っても、血を見て逃げ出したりしないで、先ずは応急処置をして、ある程度出血が収まってから救急車を呼ぶことが肝要です。何故なら、心臓は1分間に5リットルもの血液を全身に押し出しています。しかも、我々の身体の中にある血液の量は何と平均すると約5リットル位しか有りません。一般に、体内の血液量の20%を急速に失うと『出血性ショック』という重い状態になり、急激に30%以上の血液を失うと生命の危険が大きくなります。このため、体重50キロの成人が1リットルの血液を急速に失うと出血性ショックとなり、1.5リットルの出血では生命が危険にさらされます。したがって、止血処置はこれらの生命の危険を防止するために一時でも早く開始しなければなりません。
「じわ〜」っと持続的な出血です。動脈からの出血に比べるとあまりあわてる必要は有りませんが、静脈血はじわじわ出るので止まりにくい事も有り、出血量が多い場合は、滅菌ガーゼやハンカチを傷口に当てて、強く圧迫して止血します。傷が大きな場合や、感染が考えられる時は、外科的な処置が必要になるので、診療所か救急病院に相談して下さい。
キズ口が汚れているときは、水道水など流水で十分に洗浄して、清潔な布を傷口に当て強く圧迫。それでも止まらない時は診療所へ。
脱脂綿やティッシュは傷口に付着して、取り除きにくくなり、 かえって感染の元になるので、やめましょう。
出血部位の確認をして、くちびるや歯肉からなら、清潔なガーゼで出血部位を圧迫します。血が止まりにくかったり、切れているときは診療所で処置を受けて下さ い。歯肉からの持続的な広範囲の出血なら、白血病や血友病の様な内科系の疾患も 疑われます。早期に内科の総合病院を受診して下さい。
上体を起こして、いすや床に座る姿勢をとり、血液がのどに流れないよう顔は少し下向きにします。親指と人差し指で鼻翼(小鼻)をつまみ、5〜10分圧迫します。この時冷やすようにすると、血管が収縮するので止血の効果が一層現れます。のどに流れ込んだ血液は飲み込まずに口から吐かせます。これらの方法で止血しない時は、耳鼻科などの診療所を受診して下さい。
吐血(とけつ)とは、食道や胃、十二指腸などの消化管からの出血のことです。
胃からの出血は、胃液の影響を受けるため、出血した血液中の鉄分が胃酸で酸化されて“錆びた”状態になるので、細かく挽いたコーヒー豆の色のように、どす黒い色をしています。また食道からの出血は、胃液と接触しないため鮮紅色となります。
まず、呼吸が楽なように、衣服をゆるめ、吐き出した血がのどに詰まらないように、左側を下にして横向きに寝かせます。吐血の場合、食べた物が混入している場合があるので、口の中の吐物をふき取って、吐き出したものの色、量をメモしておきます。
大量に出血している場合は、輸血、止血剤、酸素吸入などの治療が必要になるため、すぐに救急車を呼びましょう。
喀血(かっけつ)とは、肺や気管、気管支などの気道粘膜からの出血のことです。血は真っ赤で、気管の中で 空気と混ぜ合わされるので、気泡を含んでいることがよく有ります。
呼吸器官から出血をしているため、誤嚥(ごえん)して窒息を起こさせないように、横向きにして寝かせ、救急車を呼びましょう。
下血(げけつ)とは、消化管内の出血が便とともに排出されることです。胃や十二指腸、小腸など消化器上部 からの出血は胃酸の影響を受けやすいので黒い泥状の便になり、肛門、直腸、結腸など下部からの出血は比較的新しい血であることが多いので、鮮紅色になります。
見た目には少量の下血でも、大腸内にはもっとたくさんの血液を含んだ便が貯まっていたり、大腸がんの早期には潰瘍の表面から少ししか出血をしない事も有るので、出来るだけ早い時期に近くの診療所を受診し、検査を受けましょう。
◆ 出血とは若干話題が変わりますが、以下の疾患も日常よく遭遇する事が有り、緊急に対応しなければならない事が多いので、付け加えておきます。
頭の中の血管が破れて出血を起こしたり、動脈に血栓が詰まって、意識状態や呼吸状態が悪くなる 事が有ります。高齢者や血圧の高い人、糖尿病や高脂血症の人や肥満の人、心房細動(しんぼうさいどう)(不整脈の一種) など、心臓の病気を持った人に見られることがよく有ります。
その様な場に遭遇したら、先ず冷静に患者さんの状態を観察し、具体的に現状を把握して救急車を呼ぶ必要が有ります。余り身体を動かすのは良く無いので、安静に保った状態で対応しなければなりません。特に頚部は、不用意に動かすと呼吸困難に陥ることが有るので、動かないように固定する事も大切な手技になります。
手足のまひや言語障害は脳卒中の前兆なので、早急にかかりつけ医に相談することも、大事を引き起こさないようにする手立てです。気を付けましょう!!
意識障害、手足のマヒ、嘔吐やけいれんの有無を調べ、耳や鼻から透明の液体が出ていないかを調べて、異常が有れば救急車を呼びましょう。発見時や搬送時に首を動かすと頸椎麻痺を来すので、特に注意を要します。
小児の頭部打撲の場合は、かなり高い所から転落しても、頭蓋骨のつなぎ目が軟らかいので、脳の表面に損傷を受けることは少なく、外傷後泣くようであればあまり心配はいりません。ただ、半日くらいは安静で様子を見るようにした方が良いでしょう。12時間以内に意識が混濁したり、頻回に嘔吐したりするようであれば、救急車を呼んで総合病院を受診したほうが良いでしょう。
左前胸部に突然強い痛みが起こり、安静にしていると5分位で自然に消退するような不快な痛みの場合は、狭心症で有ることが考えられるので、しばらく安静にしていて発作の軽快を待ち、半日ほど置いて発作が持続しないことを確認したうえで、かかりつけ医に相談すると良いでしょう。二トログリセリンなどを処方されている場合には、発作の起こった直後に舌下して、有効ならば、狭心症の可能性が強く、しばらく安静に保っていれば良いでしょう。
強い痛みと、激しい不安感に襲われるような強い発作が10分以上持続して、顔面が蒼白になったり、ショック状態ならば、心筋梗塞の可能性が高いので、早急に救急車を要請して、大きな病院を受診して下さい。一刻を争うような事態が待ち受けていることが有ります。
以上、2回に分けて家庭でできる救急処置と、救急車が現場に到着するまでの間に周りの人がするべき事柄を述べてみました。参考になりましたでしょうか。